大阪府岸和田市議会で不信任決議成立 永野耕平市長はダブル選に含み
大阪府岸和田市議会(定数24)で20日、永野耕平市長に対する不信任決議案が提出され、賛成20、反対4で可決・成立した。永野氏は10日以内に失職や議会解散を選ばなければならなくなった。不信任に反発し、市長選と市議選の「ダブル選」の可能性にも含みを持たせた。 【写真】記者会見を開いて内容を説明した永野耕平市長 永野市長は、政治活動で関わりのあった女性と性的関係を続けたことをめぐり、謝罪して解決金500万円を払う内容で大阪地裁で和解した。6日に開いた記者会見で「不適切な不倫の関係にあった」と認めて謝罪。所属していた地域政党・大阪維新の会(代表=吉村洋文大阪府知事)は8日に離党勧告処分とし、永野市長から出ていた離党届を受理した。 市議会定例会最終日の20日、議会内7会派のうち最大会派の公明党の岩崎雅秋市議が、不信任決議案提出の理由を説明。永野市長について「3日の市議会全員協議会で説明責任を果たさなかった」「報道機関に『自分に非はなく辞職する気はない』などの主張を繰り返した」と指摘。さらに「庁舎前などで辞職を求める市民からの声が連日あげられており、混乱を招いた責任は重大。市政運営は何度も大混乱が繰り返されてきており、任せることはできない」などと批判した。 ■維新は対応分かれる 一方、大阪維新の会の橘川亜紀市議は「市長には責任を自覚し、自らの行動がもたらした結果について真摯(しんし)に向き合い、市民への明確な説明と行動を示してもらいたい。しかし、市政が更なる混乱に陥ることは避けなければならない。市長には責任を重く受け止め、混乱を収束させるための具体的な行動を示してもらいたい」などとして、不信任決議案に反対した。 ■ 法的拘束力がある不信任決議案の可決には、議員の3分の2以上が出席し、4分の3以上の賛成が必要。岸和田市議会では24人が出席し、20人が賛成、4人が反対し、可決した。各会派のうち大阪維新の会は4人中3人が反対、1人が賛成と対応が分かれた。 市議会は、「議案について市長との質疑は難しい」として市長が本会議や委員会に出席しないよう求めており、不信任決議が可決された20日も永野市長が不在のままの採決となった。 議会閉会後、烏野隆生議長は永野市長と面会し、不信任決議の通知書を手渡した。烏野議長は報道陣に対し「市政を揺るがしているのでしっかり受け止めてほしい」と語った。議会の解散という選択肢については「解散の大義はない」との見解を示した。 ■市長「不信任決議になる話でもない」 永野市長は記者会見し、進退について「しっかりと重く受け止めて、対応していきたい」と述べた。ただ、不信任決議の中身について「説明責任が果たせていないということはない」と反論し、女性との問題に関しては「不信任決議になるような話でも、自分が辞める話でもない」とも語った。 今後については「議会を解散し、自分も辞職して同日選挙を目指すという考え方はある」とした。 今後、永野市長は30日までに議会解散を選択するか、選択しなかった場合は自動失職する。自動失職した場合は、50日以内に市長選が行われる。議会を解散した場合は、40日以内に市議選が行われる。 市選挙管理委員会によると、1月26日か2月2日が想定され、永野市長が議会解散後の同時期に辞職した場合も、市長選と市議選の「ダブル選」はこの日程で調整する。直近の選挙では、市長選は4400万円、市議選は7300万円ほどの費用がかかっている。(田中章博、岡純太郎) ■訴訟和解も裁判官が異例の「所見」 不信任案のきっかけとなった裁判は、市長と政治活動で関わりのあった女性が「性的関係を強いられた」と約2280万円の賠償を求め、大阪地裁に起こしたものだった。 通常は原告・被告名や訴訟記録を第三者も閲覧できるが、地裁は事案の性質を踏まえ、閲覧を制限すると決めた。一方で審理自体は公開の法廷で行われ、今年5月には永野市長が出廷し、遮蔽(しゃへい)のなかで「同意があった」などと反論した。 和解は11月14日に成立した。市長が解決金500万円を払って女性に謝罪する内容で、林潤裁判官は異例の「所見」も和解調書に書いた。 「市長の年齢・地位や日頃の言動からうかがわれる影響力、女性の就業歴や年齢などを考慮すると、純粋に対等な関係だったとはいえない」とし、「市長は女性の就職や雇用維持を左右しうる立場にあり、社会的な上下関係がおのずと形成されていた」と言及。市長が公人で配偶者がいることにも触れ、「非難を免れない」と批判した。 女性側代理人によると、第三者に和解内容を明かさない口外禁止条項は協議の結果、盛り込まれないことになったという。 女性は市長との関係でめまいや不眠に悩まされ、婚約者とも別れることとなった。今も仕事に就けず、薬の助けがないと眠れないという。「和解したくなかったが、心身ともにぼろぼろ。裁判を早く終わらせたい思いで諦めたのが実情で、今でも本当に悔しい」とコメントしている。(山本逸生) ■永野市長の性的関係をめぐる問題の主な経緯 11月28日 岸和田市の永野耕平市長が女性との性的関係を巡り、謝罪して解決金500万円を払うことで和解したことが明らかに 12月4日 大阪維新の会が、所属していた永野氏を離党勧告処分とし、8日までに説明責任を果たさなかった場合は除名とすると決定 6日 永野氏が記者会見を開き、「不適切な不倫の関係にあった」と認めて謝罪 8日 維新が永野氏を除名せず、離党届を受理 9日 岸和田市議会の定例会が開会。市議会が永野氏に対し、本会議や委員会に出席しないよう申し入れ 20日 市議会で永野氏の不信任決議が成立
朝日新聞社