広島が開幕4連敗の厳しいスタート…昨季王者が示したい「HIROSHIMA PRIDE」
■朝山HCは常にチャレンジすることを期待
王者に輝いた昨シーズンもすべてが順調ではなかった。シーズン後半戦に調子を上げ、終盤には堅守からリズムを作るスタイルを武器に粘り強く戦って快進撃。チャンピオンシップ(CS)ではワイルドカードから勝ち上がり、最後まで低かった下馬票を覆して下剋上を達成した。昨シーズン光ったチームの粘り強さは、自分たちのスタイルを信じ、離脱者が出てもチーム一丸で戦って、自信を積み重ねてきたからこそ勝ち取ったもの。昨季王者としての「HIROSHIMA PRIDE」は日本一の強さというよりも、這い上がってきたその過程にあるはずだ。 その成功体験すらも忘れてしまう必要はない。山崎は9日の練習後、昨シーズンを振り返って「強豪しかいないCSで勝ち切って次に進んでいったのは、自分たちの底力を1つ高めてくれたと思う。悪いムードや流れがあっても、あの時を思い返して、もう1回我慢して戦い続けることができると思っている。今後自分たちが長いシーズン戦っていく上で、『自分たちはできるよね』とわかったのは今後も生かせるはず」と話していた。 厳しいスタートだが、チームは前進の意思を示している。今シーズン鍵になる3ポイントシュートの試投数は開幕戦が19本だったが、その後の3試合は30本以上を記録。朝山HCが掲げる積極的にシュートを打ち切る姿勢を体現している。ただ、佐賀との第1戦で第1クォーターに13本全ての3Pシュートを外したように、決め切る部分は明確な課題。指揮官は試合後、「入らなかったからといって消極的になってしまうではなく、僕は続けてほしい。そこから自分たちがまたステップアップしていくものに目を向けてやっていくべきだと思う」と強気の姿勢を求めている。 また、今シーズンは若手の成長が不可欠な中で、22歳のロバーツ ケインの躍動が光った。第2戦で高い身体能力を活かし、体格差ある相手のゴール下へ果敢にアタックして9得点をマーク。爪痕を残したロバーツは、「他の選手よりもクイックネスに自信があるので、相手が日本人だろうとビッグマンだろうとシュートを決めに行く気持ちだった」と振り返り、「自分の持ち味が出せた試合だった。これからも目標を高く持ってベストを尽くしてやるだけ。勝てなかったけど、この試合から学べることも多かった」と高い意欲を口にした。 朝山HCは「出だしから思いきりよくやってくれたのが非常に良かった。それを1つ自分の自信につなげてほしい」とロバーツを称え、若手全体に対しても「本当に失敗を恐れずにどんどんトライしていってほしい。そこをコントロールするのは僕の仕事なので。全員にチャンスを与えたいし、その中で1つでも何かをつかんで成長してほしい」と常にチャレンジすることを期待している。 広島は今週から東アジアスーパーリーグ(EASL)が始まるため、移動や連戦が続く厳しい日程となる。さらに、三谷桂司朗がコンディション不良で佐賀との第2戦を欠場。相変わらず苦しいチーム状況だが、前を向いていく。指揮官は、「どこかで火がついたときに、若さが勢いに変わる瞬間があると思う。そこを諦めずに根気強くやり続けるしかない」と腹を括っている。 山崎も9日の練習後に今シーズンの目標について「若いチームになって、簡単に勝てるような試合は全然ない。自分たちがどんなに劣勢でも、流れが悪くても、最後まで諦めない姿勢や、粘り強く我慢し続けながらプレーすることを掲げている以上、それ体現できるチームになっていきたい」と力強く語っていた。 チャンピオンとして悔しい開幕4連敗。それでも、この厳しいスタートから少しずつ自信を積み上げて、今季もまた這い上がっていく。シーズンを通じて「HIROSHIMA PRIDE」を示す戦いは始まったばかりだ。 取材・文=湊昂大
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