岐阜・繊維産業の聖地から始まった「ひつじサミット」 後継ぎ仲間たちが業界DXに挑む
新型コロナウイルス感染拡大は、衣服の販売不振などでアパレル関連企業にも大きな打撃を与えています。 「自社がよくなっても、産地のエコシステムが壊れてしまう」――。創業135年の老舗繊維メーカー・三星毛糸(岐阜県羽島市)の岩田真吾社長は、コロナ禍をきっかけに社外の現状に危機感を強めました。 そこで始めたのが、地域や経済界も巻き込んだ産地の復興イベントです。これが地域に思わぬ効果をもたらしました。
【岩田真吾(いわた・しんご)】 1981年愛知県一宮市生まれ。 1887年創業の素材メーカー「三星グループ」の5代目として、岐阜県羽島市を拠点に世界中を飛び回っている。 慶応義塾大学卒業後、三菱商事、ボストン・コンサルティング・グループを経て2010年から現職。 欧州展開や自社ブランド立ち上げ、ウール回収再生プロジェクト「ReBirth WOOL」などを進める。 2019年、ジャパン・テキスタイル・コンテストでグランプリ(経済産業大臣賞)受賞。 2022年、Forbes JAPAN起業家ランキング特別賞受賞
コロナ禍で産地のエコシステムが危機に
2021年10月、毛織物の一大産地である愛知県⼀宮市から岐⾩県⽻島市を中⼼とした尾州地域で、新たな試みとなる大規模イベントが開催されました。ヒツジとウールにちなんだイベント「ひつじサミット尾州」です。 仕掛け人は岩田さん。繊維業が盛んなこの地域を盛り上げようと、「ものづくり」と「体験型観光」を組み合わせたクラフトツーリズムのイベントとして企画しました。 織物工場の見学、羊毛を使った工作教室、ヒツジのえさやり、羊肉のバーベキュー……2日間にわたって開かれたこのイベントには、地域の53事業者が参加し、各地で工夫を凝らした企画が実施されました。来場者は、6月のプレイベント2日間と合わせた計4日間で約1万2000人。2022年、2023年には、さらに規模を拡大して開催され、今年も10月25日(金)~27日(日)に開かれる予定です。