いろんな事情で人前で食べられなくても、会食や飲み会の輪には入りたい。あえて触れないでくれる優しさに涙した
◆人生で初めて体験する症状の数々 以前の記事にも書いたが、私は19歳の時、酷い胃腸炎になった。いわゆる急性胃腸炎というやつで、夜中に、あまりの激痛でのたうち周り、救急搬送されたが、点滴を打っただけで帰された。もちろん個人差はあるが、本来急性胃腸炎は日にち薬で、しばらく養生すれば治るものだ。 しかし、その後の経過は不可解なものだった。 そもそも、運ばれるまでの数ヵ月間、人生で初めて体験する症状の数々に悩まされた。常に消化不良で、ガスが溜まってお腹がぱんぱんに膨れる。それが1日中続く。何を食べても消化せず、ずっとお腹が痛い。そんな日々が2ヵ月ほど続いた後の救急搬送だった。 急性胃腸炎になった後、症状は改善するどころか、悪化の一途を辿った。胃酸があがってきて、胃が灼けるように痛い。まるで胃を火で焙られているようだ。そして、大きな砂利を胃に詰め込まれたような、ゴロゴロとした異物感。家は坂の上にあったが、食後に坂を下ると胃の中がかき回され、気持ち悪くて歩くのが苦痛だった。 さらに、胃の入口にプラスチックの蓋をされたように、固形物を受け付けない。最後の食事からどれだけ時間が経とうが、全くお腹が空かない。空腹感や食欲を感じる機能が、私の身体からなくなった。 そしてしょっちゅう便秘になり、かと思えば酷い下痢を起こした。胃カメラを飲んだが異常はない。とっかえひっかえ薬をいくつも出してもらったが、回復の兆しは見えなかった。
◆常にストレス度はマックス 原因はストレス以外考えられなかった。当時、エアコンもないような劣悪な環境のシェアハウスに大人数で住んでおり、夏は灼熱地獄で、夜に1時間ほどしか眠れず、何度も熱中症になった。住人同士のトラブルも絶えず、プライベート空間はなく、騒音で落ち着かない環境。常にストレス度はマックスを更新し続けた。でも、苦学生の私に、そこを抜け出して1人暮らしする選択肢はなかった。 シェアハウスの住人の食事の匂いで吐きそうになった。食事の匂いを嗅いだだけでもうお腹はいっぱい。夕方にその日初めて口にするスプーン1杯の豆腐も、無理矢理押し込むような感覚だった。 冷たいものはもちろん、常温の水でさえ飲むのが辛い。お茶など少しでもカフェインが入ったものを飲むと胃酸が出る。もともとは1日4Lくらい水分を摂るような体質だったが、この頃は水分を摂ると身体が吸収せず、飲んだ後動くと「ちゃぽっちゃぽっ」というような状態だったので、白湯を少しだけ、ちびちびと飲んだ。 どろどろのおかゆや煮物しか食べられない生活が長く続いた。お土産でお菓子をもらっても食べられず、口に少し含んですぐに吐き出した。飲み込めば、また激しい腹痛に襲われる、と怖くて、気が気でなかった。 “普通食”が食べられるようになったのは、大学卒業が目前に迫った冬のことだった。だから、大学生活は、常に食にまつわる悩みと隣り合わせだった。