開幕白星に貢献の阪神・糸井が紡ぶ“見えない糸”「死ぬ気で戦う」
阪神が広島との両軍合わせて27安打が乱れ飛んだ乱打戦を制して敵地で2年ぶりの開幕白星を飾った。1番で起用された2年目の高山俊(23) 、オリックスからFA移籍してきた3番の糸井嘉男(35)、4番の福留孝介(39)の3人が猛打賞なのだから、10得点も納得だが、なんといっても原動力となったのは、新戦力の糸井だった。 初回無死一、二塁から四球でつないだが、3回には無死一、二塁で左中間を真っ二つに割る2点タイムリー。ワンバウンド、ツーバウンドでフェンスに当たった。 「凄く応援が熱い中で、緊張しましたけど、必死で振り抜いてタイムリーになって良かった」 糸井は、沢村賞のジョンソンが、対左打者に対して絶対的な自信を持っているアウトコースのカットボールを逆らわず逆方向へと強振した。 「凄いピッチャーなんで、若いカウントから行こうと思っていました」 カウントは0-1。追い込まれる前の好球必打である。カットボールは少し浮いていた。 1点差に肉薄された後の価値ある追加点だった。 糸井の勢いは止まらない。 続く4回。また先頭の高山が広島内野のミスを誘い得点圏に進むと、2番の上本はバントに失敗して追い込まれたが、最低限の進塁打を二塁に転がして、高山を三塁へと進めた。 「上本の進塁打。自分も助かりました」 糸井の気持ちは楽になったのだろう。前進守備でヒットゾーンが広がったので引っ張ってよし、外野フライでもよし。カウント3-1から、今度はツーシームを引っ張った。強烈な打球は飛びついた新井のグラブを嘲笑うかのように一塁ベースの横を抜けていく。上本の進塁打がもたらしたタイムリーである。 こういう“見えない糸”をつなぐことができなかったのが、昨年までの阪神の若さだった。 だが、糸井の加入でチームに“見えない糸”がつながりつつある。これが嫌らしさであり粘りである。 金本監督は、2番上本に簡単にバントをさせなかったが、こういう攻め手が打てるのも糸井の存在があってこそである。糸井が、昨年3敗の天敵ジョンソンの武器である「動く球」を2種類とも、一発で仕留めた意義も大きい。次回の対戦から広島バッテリーが頭を使い、意識することになる。 「いろんな意味で大事な試合。僕の中でも大事な試合で活躍できて良かった」 糸井は、心の底から笑えてはいなかった。