文科相が是正要求……教科書採択はどうなっている?
どこが教科書を決めるの?
公立学校の教科書の採択は、各教育委員会が行うことが地方教育行政法(地教行法)で決まっています。ところが、その後に制定された教科書無償措置法では、市郡を単位とする地区協議会(都道府県教委が設定)で共同採択するとされています。地区内で採択教科書の検討や採択後の授業研究などがしやすく、児童・生徒が転校しても教科書が変わらないメリットがある他、教科書供給も円滑にできる、というのが理由です。 地教行法よりも後に制定された無償措置法の規定が優先される、というのが文科省の解釈です。ただし、これに反した場合でも国が無償給与しないまでだ、というのが民主連立政権の判断だったのに対して、安倍政権は「日本は法治国家。ルールはルールとして守ってほしい」(下村文科相)という厳しい態度で臨んでいます。
八重山を「教訓」に法改正も
教科書採択をめぐっては、八重山地区の一件を教訓として12年12月、中央教育審議会初等中等分科会が(1)構成市町村による協議ルールの明確化を図る、(2)「市郡」単位となっている採択地区を「市町村」に柔軟化する――などの意見をまとめ、今通常国会に関連法改正案が提出される見通しです。ただ、中教審での審議は実質2回、下村文科相が「教科書改革プラン」(同年11月)で方針を発表してから約1か月という異例のスピード審議でした。それも共同採択制度自体を見直すかどうかは最初から「今後の検討課題にしたい」(文科省事務局)として見送られています。 採択地区を「市町村」とするのも、郡境を超えた市町村合併が行われている実態に合わせるもので、町村の単独採択を認めるものではありません。 (渡辺 敦司/教育ジャーナリスト)