名古屋・町工場職人技と舞台芸術が融合 準備進む『月灯りの移動劇場』上演
農村部や医療施設、小学校などで展開するプロジェクト「月灯りの移動劇場」が、愛知県名古屋市の中川運河沿岸を拠点に進められている。 突如現れるテント内で、さまざまな舞台芸術が繰り広げられるという、フランス農村部の文化をヒントにした移動式劇場の試みで、地元企業やモノづくりが盛んな同地域の職人らも協力。地域出身で舞踏家として世界各地で活動する、プロジェクト主宰の浅井信好さん(32)は「カフェに立ち寄るような気軽さで舞台芸術に触れて欲しい」と、9月に同地域で行うワークショップや上演に向けて、取り組みを加速させる。
ダンサーと「おもちゃ箱」が創り出す 不思議な舞台空間 鑑賞とともに体験も
舞台は、ダンサーによるパントマイムやダンスとともに、「おもちゃ箱」とよばれる木でできた舞台美術品が不思議な空間を創り出す。舞台上に並べた観覧車や動物をかたどった小道具に光を当て、会場に大きな影絵を浮かび上がらせる演出もある。 活動拠点は、延べ床面積約2000平方メートルの施設。中川運河周辺での芸術文化事業を支援するリンナイの旧部品センターで、同社が無償提供している。施設内での上演活動は、さまざまな制約上できないが、プロジェクト準備には十分な広さがある。 同所の駐車場には、名城大学の学生らによって作られた移動式テントを設置。その中で100人ほどの観客を集めて上演する。このテントの設置作業は、観客の手で行うことができる。来場者は芸術を見るだけではなく、設営に参加することで、さまざまな感動を共有できる。
フランスで感じた日本の芸術の距離感 芸術側から見てくれる人に近づく発想へ
プロジェクトを始めるきっかけは、浅井さんやプロジェクトメンバーの海外経験から。フランス農村部で開かれるテントの舞台上演は、入場チケットが安価で、子どもやお年寄りなど誰もが気軽に、芸術に触れることができるという。一方日本では、主要都市部などの舞台芸術活動は盛んだが、農村部と比べると差がある。そこで、上演する側が芸術に触れる機会が少ない人たちのもとへ近づいていき、芸術を楽しんでもらうと思いついた。