【日本DJ協会 presents Spotlight DJ's】Vol.3「渋谷の人気レストランでDJを起用する理由とは?」
ナイトクラブのイメージが強いかったDJも近年ではその活躍の場が広がり、スポーツ会場や企業イベント、レストランなど様々な場面でDJが求められ、その需要が高まっている。ナイトクラブ以外のシーンで活躍するDJにフォーカスを当て、インタビューを通じて彼らが生み出す魅力に迫るべく、Vol.3となる今回は、東京都渋谷区にある夜景を望む道玄坂上ビル最上階のレストラン「Cafe Legato」の宗像店長と、こちらで活躍するDJ SHINに話をきいた。 ──レストランにDJを入れはじめたキッカケは何ですか? 宗像店長:キッカケはCEOの長谷川の発案ですね。世界的に見て、レストランでDJを入れているところが、多いのでそれ見て取り入れたのだと思います。あと、元々ミュージシャンをよくキャスティングしていて、JAZZのLIVEをやったり、音大の方々をディナータイムに呼んで演奏してもらったりなどしていたので、その流れで、DJにも入ってもらいました。 ──今もそういったLIVEもやられているんですか? 宗像店長:Legatoでは今は入れてないんですけど、代官山にある系列店のタブローズでは、JAZZバントの方々などに入ってもらっています。 ──普段、DJは1日何人入っていますか? 宗像店長:基本的に、19時~22時か20時~23時のどちらかでひとりです。クリスマスやカウントダウンなどスペシャルな時は、DJの時間が伸びるので2人でやってもらっています。 ──音量についてはどのようなバランスを意識していますか? 宗像店長:会話の邪魔にならないボリュームを意識しています。 ──DJを入れることによってどのような変化が生まれましたか? 宗像店長:Legatoではダイニングの時間帯に誕生日や記念日などのお祝いがとても多いので、それぞれの記念プレートを出すときに、DJにバースデーコールを入れてもらって、バースデーソングを流してもらっています。その演出でお客様がとても喜んでくれている印象です。あとはリクエストですね。お客様が来店された時点で、DJにリクエストできることを伝えているのですが、リクエスト頂いたお客様の満足度も上がっていると思います。 ──リクエストはどの範囲まで応えていますか? 宗像店長:基本的にJ-POPはNGにしています。DJ達の判断でかける分には問題ないですが、リクエストでくるJ-POPをかけ続けるとカラオケ大会みたいな雰囲気になってしまうんでよね。1番最初にDJを入れた時にそういったことがあったので、J-POPはやめることにしました。 「Cafe Legato」宗像店長 ──DJを入れる時に選曲の要望はどのように伝えていますか? 宗像店長:CEOの長谷川がSpotifyのプレイリストを30個くらい作っていて、それをDJがいない時はBGMとして流しているのですが、そのプレイリストをDJの方に見てもらって、その世界観に沿った選曲をしてもらっています。 ──DJ中に「もっとこうして欲しい」というような要望を伝える時はありますか? 宗像店長:今入って頂いているメンバーはずっとLeagtoでやってくれているDJ達なので、Legatoにあったプレイをしてくれているのでお任せしています。メンバーを固定せず、色々なDJに入ってもらっていた時は意図を汲んでもらえないこともあり、苦労した覚えがあります。 ──良いなと思うDJはどのようなDJですか? 宗像店長:今入って頂いているDJの方々は、Legatoの雰囲気に沿った選曲の中でお客様を楽しませてくれているし、MCでもしっかり盛り上げてくれているので、皆さんとても素敵なDJだと思います。 ──DJが入ったことによって、お客様の満足度は上がったと思いますか? 宗像店長:間違いなく上がったと思います。DJなしのLegatoは考えられないぐらいです。 ──DJが入ったことによって、新しい顧客の獲得にも繋がっていると思いますか? 宗像店長:DJによるアニバーサリー演出があるという所で、選んでくれるお客様がとても多いので、繋がっていると思います。DJのコール希望の予約もとても多いですね。 ◆ ◆ ◆ ──レストランでDJをするときに意識することは何ですか? DJ SHIN:LegatoでDJをする際は、基本的にひとりで3時間プレイするので、1日の中のストーリーを特に意識しています。普段、19時~22時や20時~23時の時間帯を担当していますが、Legatoは人気店で平日でもお客様が2回転、時には2回転半することがあります。2回転目のお客様が大体20時頃に来店されることが多いので、そのディナーが始まる時間に合わせてDJをスタートすることが多いです。そのため、お客様のフードのコースの流れを意識しながらプレイしています。乾杯から前菜、メインの肉や魚料理、パスタやピザ、そしてデザートという一連の流れに沿った選曲を心がけています。会場全体の雰囲気や提供されるフードを見ながら、乾杯時にはテンション高めの曲を選び、その後は少し落ち着いた曲をかけ、お客様の酔い具合やテンションに合わせて選曲も上げていきます。メインディッシュの提供時が一番テンションが上がるタイミングだと思うので、その時には曲のテンポを上げたり、ヒット曲を多めにかけることもあります。最後は締めに向けて、ゆったりした流れに持っていくようにしています。また、Legatoはオシャレな雰囲気だけでなく、盛り上がりやパーティー感も求められるお店なので、その中間を狙った選曲を意識しています。海外のレストランのように、オシャレ感とパーティー感を融合した雰囲気を目指しています。 ──LegatoでDJをし始めた頃に苦労したことはありますか? DJ SHIN:Legatoは豪華な内装と好立地による特別感や非日常感が魅力のお店です。そのため、お祝いに利用されることが多く、特に20代前半の女性グループが女子会で誕生日祝いをすることが頻繁にあります。口コミで広がり、平日でも多くのバースデーコールがあります。3時間のDJ中に10回以上のバースデーコールを入れることもあり、あまりコールが続き過ぎると、普通に食事をしているお客様にとっては「またバースデーか」と思われることもあります。お祝いは全力でしたい一方で、他のお客様の邪魔をしないように声のトーンや喋り方、言葉の数やテンション感を調整するのが最初は苦労しました。クラブでのバースデーコールは得意ですが、レストランでは丁度いいバランスを探すのが大変でした。今では慣れてきましたが、その日の雰囲気によっても変わるので注意しています。 ──お客様からリクエストされることはありますか? DJ SHIN:リクエストはあります。日によって異なりますが、全く来ない日もあれば、20曲ほどリクエストを頂くこともあります。 ──リクエストにはどのように対応していますか? DJ SHIN:お店の意向として、お客様が楽しんでくれるのであれば、リクエストには基本的に応えています。ただし、レストランとしてのオシャレな空間を保つため、雰囲気にそぐわない曲やカラオケのようなノリになってしまう曲は避けています。 ──よくかけるバースデーソングは何ですか? DJ SHIN:洋楽の定番バースデーソングを基本的にかけています。ただ、バースデー祝いが非常に多いので、1曲だけでは対応しきれないため、10曲から15曲のストックを用意しており、できるだけ被らないようにしています。女性の誕生日には女性ボーカルの可愛いらしい雰囲気の曲を、男性の誕生日にはレニー・クラヴィッツやザ・ビートルズのバースデーソングなど、少し渋めの曲をかけています。 ──Legatoでよくかける曲はありますか? DJ SHIN:女性客の割合が多いため、デュア・リパ、テイラー・スウィフトやアリアナ・グランデなどの女性アーティストの楽曲をよくかけます。デュア・リパのようなダンスポップはパーティー感を出す時にも、とても使い勝手が良いです。卑猥な表現や攻撃的なリリックが含まれていない曲が多く、Legatoの雰囲気に合うと思います。また、ディズニー系の曲もよくかけます。例えば、「リトル・マーメイド」の「Part of Your World」や「アラジン」の「A Whole New World」などです。 ──季節やイベントによって選曲を変えたりしますか? DJ SHIN:はい、イベントでいうとクリスマスやハロウィンの曲はもちろん用意しています。洋楽ベースでは春秋の感覚はあまりないのですが、夏や冬の曲はかけています。また、時事ネタ系の曲も意識してかけています。例えば、流行っている映画の曲やスポーツイベントのテーマ曲、オリンピックの時期にはオリンピック関連の曲などです。お客様の会話のネタに繋がれば良いなと思って、そういった曲をかけています。 ──レストランでDJをしていてやりがいを感じる瞬間はどのような時ですか? DJ SHIN:日本ではレストランや飲食店でDJを取り入れる所が徐々に増えてきていますが、まだ少ないのが現状です。そんな中でLegatoでは基本毎日DJを入れている貴重なお店であり、そんなLegatoに対して「DJを入れて良かったな」と思われるような存在意義を出していきたいと考えています。目立つことではなく、DJがその瞬間に合った音楽を選ぶことでお客様が楽しんでくれたり、良いお祝いの演出ができたと感じられることがやりがいです。お店から「ありがとう」と言ってもらえたり、お客様からも好評を頂けた時には、非常にやりがいを感じますね。 Cafe Legato(カフェ レガート) 渋谷・神泉のイタリアンレストラン。渋谷駅/神泉駅から徒歩5分。渋谷・道玄坂を登り切ったビルの15階に位置する夜景が美しいレストラン。カジュアルなイタリアンをベースに本格的な料理をカフェスタイルで提供。店内は両面がダイナミックなガラス張りで、一日を通じて空の変化を楽しむことができ、ゆっくり沈む壮大な夕日や、心が震える美しい夜景を堪能できる。 東京都渋谷区円山町3-6 E・スペースタワー 15F DJ SHIN 2000年頃、東京でDJキャリアスタート。「Studio FLOWER」「SIX TOKYO」「SEL OCTAGON TOKYO」など、六本木地区のナイトクラブ数店舗でレジデントDJを務める。 2018年、2019年、国内最大の規模/知名度を誇る都市型フェス「ULTRA JAPAN」に2年連続出演。毎年8月に横浜で開催中、日本最大級の”船フェス”「夏クル」のイベントプロデューサーを担当。 2019年、「一生に一度は体験したいパーティー」として話題のサマーパーティー「泡パ® by Afro&Co.」のサウンドディレクターを担当。2020年、コロナ禍の自粛期間において「今だからこそクラブにしかできないエンターテインメントがある」をテーマに掲げ、日本全国述べ30クラブ以上を繋ぐ「ジャパンクラブフェスティバル」をオンラインパーティーとして企画・開催し、合計6日間で述べ約5万人の視聴者を集めた。 ジャンルレスな選曲やイベントプロデュースで、東京クラブシーンの核となる存在の一人として活躍中。
BARKS