アジア舞台に海外勢との競争、地方路線の開拓……5年目のLCC展望
企業とのタイアップを進めるのはピーチ・アビエーション。フォルクスワーゲンとコラボレーションし、「ピンクビートル」の機内販売専用車を限定5台で販売した。女性ウケしそうなかわいいピンク色の小型車で、買い物などのちょっとした街乗りもしやすそう。もちろん機内で全額お支払い……というわけではなく、機内のシートポケットにリーフレットが置かれ、興味がある人は客室乗務員に詳細を尋ねるという仕組み。価格は307万円(税込み)にもかかわらず、販売終了予定の昨年12月20日時点で2台が販売済みということで、問い合わせも多く好評であることから販売期間を延長した。発表会で井上慎一CEOは販売目標台数の明言を避けたものの、充分合格点といえるだろう。日本のLCCの中でも最短で黒字化しており、機材の拡張も急ピッチに進める計画だ。 セブや重慶、武漢など、日本人が今まで馴染みが薄かった都市にスポットが当たり、割安に行けるようになることで、日本人海外旅行者の減少傾向に歯止めがかかるかもしれない
2017年はどうなる?
バニラエアは今年2月に成田・関西~函館線、3月に関西~成田・奄美大島線の4路線に就航する。函館へは国内LCCとして初就航、成田~札幌(新千歳)線と組み合わせた周遊も可能となる。ピーチ・アビエーションも日本のLCCとして初となる沖縄(那覇)~バンコク(スワンナプーム)線にも就航する。春秋航空日本も中国の地方都市路線を開設する方針で、ジェットスター・ジャパンも広州への就航を中国当局から許可されている。新千歳や福岡、関西、沖縄のような旅客数が多い路線で知名度を上げるとともに収益基盤を確立するステージを終え、セブやホーチミン、仙台のような競争が少なく需要が見込める路線へ展開していく流れが加速するだろう。
マレーシアのエアアジアが楽天らとともに就航準備中の新生エアアジア・ジャパンも、日本の空に再参入する。今年初旬にも名古屋(中部)~新千歳線、春にも中部~桃園線にも進出する。東南アジアでは抜群の知名度を誇り、クアラルンプールを拠点とするエアアジアや長距離線を運航するエアアジアX、バンコク(ドンムアン)を拠点とするタイ・エアアジアXとのスムーズ乗り継ぎができるようになれば、強力なプレーヤーになりかねない。 ライバルは日本国内のみにとどまらない。韓国のLCCも日本発着路線を増便する。韓国ではソウル(仁川・金浦)、釜山、大邱などの空港はすでに発着枠が限界で、軍民共用空港で利用に制限があるという事情から、成長に陰りが見え始めている。すでに関西~グアム線を運航しているティーウェイ航空が成田~グアム線でチャーター便を就航させることを発表しており、日本のLCCの就航を待たずに、韓国LCCが日本とミクロネシアを結ぶ路線を拡充し始める。2017年もLCCから目が離せない1年になるだろう。
---------------------------------- ■後藤卓也(ごとうたくや) 旅行情報メディア「Traicy(トライシー)」編集長、1989年生まれ。航空や鉄道、バス、格安旅行、航空券、マイルの取材を得意とする。LCCを中心に年間100搭乗。トライシー・サイト