【重大証言】岡山での飲み水汚染の原因と指摘された企業、「推奨温度より低温で焼却」で大気汚染も拡散のおそれ
工場裏の地下水からも高濃度を検出
ところで、同社が、活性炭再生炉のある工場から約3キロ離れた山中に資材置き場を借りたのは2007年9月のことだ。 関係者によると、それ以前は、工場わきの空き地に、使用済炭を詰めたフレコンバックを置いていた。現在は舗装されているが、当時は砕石を敷いただけだったという。今年8月の町の調査では、このすぐ裏の地下水から410ナノグラムのPFOAが検出されている。
山中の資材置き場だけでなく、工場わきの旧置き場からも水質汚染を引き起こした可能性がある。 町は現在、水道水汚染をめぐる対策費用など2億円とも言われる賠償を満栄工業に求めているが、今後、土壌浄化や町が実施する血液検査などの費用も加えると、数億円にのぼると見られる。 PFOS・PFOAについては2000年代初めに有害性が指摘され、大手化学メーカー8社が協定を結んで「2015年までの全廃」に合意したのは2006年。にもかかわらず、国内の規制は遅れ、PFOAの製造・使用が禁止されたのは2021年になってからだった。いまだに排出基準もない。
汚染源の特定についての責任をもつとされる岡山県が環境省との間でかわした「廃棄物処理法等に係る疑義照会フォーマット」は開示されたものの、大半が黒塗りされており、協議の中身はわからない。飲み水に限らず土壌、大気、地下水まで、PFASを吸着した使用済み活性炭が招いた多重汚染の実態は解明されていない。 とくに、焦点となるのは、そもそもの原因となった使用済炭がどこから持ち込まれたのかだ。吉備中央町の設けた原因究明委員会には、環境省中国四国地方環境事務所の横山貴志子・環境対策課長も加わっているが、汚染の根本原因の解明に迫ろうとする議論は行われなかった。委員会は報告書で「汚染された土壌の除去およびコンクリート等による被覆」を提言し、役割を終えている。 「円城浄水場PFAS問題有志の会」代表の小倉博司さんはこう話す。 「満栄工業がずさんな管理の責任から逃れることはできないが、原因となる使用済炭はどこからもたらされたのか、“汚染の輸出ルート”を明らかにしてほしい。廃棄物処理の川下にあたる満栄工業だけに責任を押し付けるのではなく、川上にある企業や活性炭業界も責任を分担すべきではないか。資金を出し合って基金を設け、住民や従業員の長期にわたる健康調査に充てるなど、規制の空白をつくった国がイニシアチブをとって、汚染対策のモデルケースをつくってほしい」 筆者:諸永裕司(もろなが・ゆうじ) スローニュースで『諸永裕司のPFASウオッチ』を毎週連載中。(https://slownews.com/m/mf238c15a2f9e) ご意見・情報提供はこちらまで pfas.moro2022@gmail.com
諸永裕司