コーヒーで旅する日本/九州編|姉妹で営む「モリトンコーヒー」。自分たちのサイズ感でふるさとに根付く居心地の良い店へ
全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。 【写真】ゆっくり過ごすのにぴったりな店内。店前の空き地では不定期でマルシェイベントも行っている 九州編の第90回は山口県・防府市にある「モリトンコーヒー」。JR防府駅の目の前、駅前を東西に伸びる幹線道路・県道184号線沿いと好立地にあるカフェで、ガラス張りの店内から漏れる温かな灯り、店の入口あたりにさりげなく飾られた季節の花が優しい雰囲気を醸し出し、いかにも居心地がよさそう。 店がオープンしたのは2023年11月と、まだ半年足らずの新しい店だが、こだわりのブレンドコーヒーに加えて食事がおいしい店として少しずつファンを増やしているところだ。森佐知子さん、鳥越京子さんの姉妹で営むアットホームさも魅力の「モリトンコーヒー」。どんな思いで2人が店を開き、営んでいるのか聞いてみた。 Profile|森佐知子(もり・さちこ)さん、鳥越京子(とりごえ・きょうこ)さん 山口県防府市生まれ。栄養士の資格を活かし、病院などで長年勤めてきた姉の森佐知子さん、徳山コーヒーボーイでコーヒーについて学び、コーヒーマイスターの資格も持っている妹の鳥越京子さんの姉妹で、2023年11月に「モリトンコーヒー」を開業。料理は佐知子さん、コーヒーは京子さん、デザートは2人で協力しながらといったように、それぞれの得意を活かして店を営んでいる。 ■趣味のカフェ巡りから夢を叶えた 2023年11月にオープンした「モリトンコーヒー」は森佐知子さん、鳥越京子さんの姉妹で営むカフェ。防府市で生まれ育った2人の共通の趣味はカフェ巡り。20代のころから「いつか2人でカフェを開きたいね」と夢を抱き、それを叶えた形だ。 「モリトンコーヒー」の屋号は佐知子さん、京子さんの苗字を組み合わせており、「モリトリだと語呂が悪いのでモリトンにしました」と佐知子さん。店のロゴを見てみると森に見立てた大きな木に加え、ちょこんと小さな鳥が描かれている。これは佐知子さんの娘さんが手掛けたものだそう。手作り感にあふれており、そんなエピソードを聞くと、優しい気持ちになれる。 ■毎日飲める味わいのコーヒーを目指して 柱に掲げるコーヒーを淹れるのはコーヒーマイスターの資格を持つ京子さん。20代のころに飲んだ徳山コーヒーボーイのコーヒーに感銘を受け、同店で働く中でコーヒーについて知識を深め、抽出技術などを磨いた。そんな経歴から「モリトンコーヒー」の3種あるブレンドはすべて徳山コーヒーボーイに特注したもの。 深み、コク、余韻に広がる甘味にこだわった深煎りのモリトンオリジナルブレンド、すっきり爽やかだけど香り高い浅煎りの港町ブレンド、マンデリンベースでスパイシーさを感じるアイス用の塩の浜アイスブレンドを用意する。 「どのブレンドも、私たちの頭の中にある味わいのイメージを徳山コーヒーボーイのロースターさんが確かな技術で表現してくれたもの。私たちがシンプルに毎日飲みたい味わいにこだわったほか、港町ブレンド、塩の浜アイスブレンドなどは防府の町もイメージしています」と佐知子さんは話す。 ドリンクの一番のおすすめはハンドドリップ。日によって変わる気温や湿度、豆のエイジングに合わせてコーヒー粉の膨らみ方を見たり、香りを嗅いだり、基本的に五感を頼りに抽出。「感覚も大切だと思っていて、抽出時間を計測したり、細かい点まで気にしていないだけ」と笑う京子さん。この大雑把な感じが気楽でまた良い。ただ長年コーヒーを淹れているだけにどの焙煎度合いの豆でもスムースですっきりとした味わいに抽出する技術はさすがだ。 ■地域との繋がりを大切に 防府市で生まれ育った2人だけに地域との繋がりも大切にしている。知人が手作りした焼き菓子を販売したり、規格外・未利用・未流通の地元野菜を活用したスープやカレーなど、レトルト商品を手掛ける地場企業とコラボした軽食メニューを提供したり、独自の取り組みも行う。 佐知子さん、京子さんは「防府だからこそできるメニュー作りはもちろん、地域の人たち同士が繋がるきっかけになれるような場所でありたいと思っています」と口をそろえる。2人が醸し出す雰囲気のおかげか、どこかゆったりとした時間が流れる「モリトンコーヒー」。1人でもグループでも、さまざまなシーンで活用できそうだ。 ■森さんレコメンドのコーヒーショップは「MIGLIORE COFFEE」 「防府市のスーパーマーケットの駐車場の一角にある『MIGLIORE COFFEE』さん。私も時々お客として通っていたロースタリーで、地域に根付いたお店です。当店がオープンしてしばらくしてオーナー兼ロースターの中島さんが来てくれて、いろいろお話するようになりました。同じ防府市内に『AWESOME COFFEE BREWERS』、山口市内に『MIGLIORE COFFEE ROASTERS』と系列店も展開する人気のコーヒー屋さんです」(森さん) 【モリトンコーヒーのコーヒーデータ】 ●焙煎機/なし ●抽出/ハンドドリップ(bonmac V型ドリッパー)、エスプレッソマシン(Nuova Simonelli) ●焙煎度合い/浅煎り~深煎り ●テイクアウト/あり ●豆の販売/100グラム800円 取材・文=諫山力(knot) 撮影=加藤淳史(Saint-Loup-de-Varennes) ※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。
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