内装会社の社長が過激な“イジメ動画”をTikTokに投稿 「名誉権を侵害された」社員の訴えに裁判所の判断は
裁判所の判断
Xさんが勝訴。会社に対して「慰謝料20万円を払え。動画も削除せよ」と命じられた。 裁判所は、具体的な事実を摘示してXさんの社会的評価を低下させたことを理由に【名誉権の侵害】と認定している。以下、前述した3つのイジメ動画に対する裁判所の判断だ。 ・謝罪強要 Xさんが会社から注意を受けたにもかかわらず真摯(しんし)に謝罪ができない人物との印象を与えている ・半殺しにすんぞ Xさんが他の同性の従業員にわいせつな行為などをして迷惑をかけるという印象を与えている ・体に落書き Xさんがウソつきであるという印象を与えている
認定されなかったイジメも…
判決には、残念ながらXさんが涙を飲んだ内容もある。 Xさんは「社長が平手で顔面を殴ってきた」「10回くらい殴る蹴るの暴行を加えられた」「辞めたいと言った時に『次に辞めたいと言ったら社長の好きなようにしていいです』との誓約書を書かされた」と主張したのだが・・・裁判所は「これを認めるに足りる的確な証拠はない」として、これらのイジメを認定しなかった。 裁判は証拠が命だ。録音は最強なので、パワハラ気質の上司の下で働いている方にはぜひ実践していただきたい。 また、被害を受けた直後に誰かにLINEするのも手だ。裁判官が証拠として採用するかは出たとこ勝負だが、過去の判例では実際に有効だったこともある。(東京地裁 R2.3.3・セクハラ事件) ワンマン社長の裁判例 今回の事件のほかにも、ワンマン社長と社員が争った裁判例を紹介する。 この人物は自分の非をゼッタイに認めないパワハラ社長だったが、社員を解雇したところ、裁判所から「慰謝料100万円を払え」と命じられた。理由は「己に問題があることに思いをいたさず、自分の指示に従おうとしない社員を会社から排除すべく解雇した」と認定されたからである。(大阪地裁 R5.2.7) 【関連記事】「人格権を侵害」パワハラ社長が反抗する社員を“完全無視”から“解雇”の非道に裁判所が突きつけた代償
最後に
イジメの様子をTikTokに投稿するような社長は珍しいが、裏でパワハラを行っている社長はごまんといるだろう。小規模会社かつワンマン社長であれば、パワハラが行われる可能性は高まる。社長や会社に一矢報いたい方は、ぜひ、録音を駆使してくださいね。 ■ 林 孝匡(はやし たかまさ) 【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。情報発信が専門の弁護士です。 専門分野は労働関係。好きな言葉は替え玉無料。
林 孝匡