日英伊の「次期戦闘機」実はかなり“追い込まれている?” 切迫するカネと時間の問題 余裕は全然無い!?
くすぶる「見直し」論と「サウジを仲間に」論
イギリス国防省は2024年10月に、GCAPと、GCAPや無人航空機などで構成されるFCAS(将来戦闘航空システム)に関する2025年度の支出を、当初計画の14億6000万ポンドから1億6000万ポンド削減し、13億ポンドとする方針を明らかにしています。 イギリス国防省はこの削減がGCAPの後退を意味するものではないと強調していますが、イギリス国内には以前から、アメリカ、オーストラリアとの軍事同盟「AUKUS」の一環として建造を計画している新原子力潜水艦の開発とGCAPを両立するのは財政的に難しいとの理由から、GCAP計画の見直しを主張する意見もあります。 日本とイタリアにも財政的な余裕がないことから、3か国以外の国、たとえばサウジアラビアなどを開発国に加えるべきなのではないかとの声も、根強く存在します。 また、国際航空宇宙展2024の会場では、サウジアラビア以外の国が、部分的な開発パートナーとして加わってくるのではないかという見方も浮上していました。 国際共同開発の参加国を増やせば、1国の財政支出を削減できるというメリットがあります。その一方で事務作業だけでも、前に述べたGIGOの枠組みの見直しが必要になるなど、開発作業は煩雑になります。 このまま3か国で突き進むにせよ、他国を加えるにせよ、開発が本格化する前に意思決定を行う必要があり、残された時間はあまり多くないと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
もっと切迫する「エンジン開発」
当たり前と言えば当たり前の話なのですが、航空機に搭載するジェットエンジンは、試作機が完成するより先に地上での運転試験や、実際に飛行中の航空機に搭載する運転試験などを完了し、性能や安全性などを確認しておかなければなりません。 ユーロファイター・タイフーンの試作機が初飛行したのは1994年3月27日でしたが、搭載するユーロジェットEJ200ターボファン・エンジンは試作機初飛行の3年前、1991年に初の運転試験を行っています。 GCAPのエンジンの開発は日本からIHI、イギリスからロールス・ロイス、イタリアからアヴィオ・エアロが参加して行われますが、アヴィオ・エアロの役割は補助的・副次的なもので、実際の開発作業はIHIとロールス・ロイスが主導します。 現在IHIとロールス・ロイスのスタッフは月に一度くらいのペースで日本とイギリスを行き来して、詳細設計など開発に向けた作業を進めていると筆者は聞き及んでいます。GCAPの試作機がいつ頃初飛行するのかは明らかにされていませんが、冒頭で述べたように航空自衛隊は2035年の就役を望んでいるので、遅くとも数年前にはエンジン開発と試作機の飛行試験を完了している必要があります。 エンジンについても「まだ11年ある」ではなく、「もう11年しかない」という、時間との戦いを要求されることになると思われます。
竹内 修(軍事ジャーナリスト)