平和思い市民団体設立 戦争の「語り部」不足で風化懸念 体験聞き取り悲惨さ伝える 浜松
15日で終戦から79年。戦争の惨禍を伝える「語り部」の人材不足により、記憶の風化が懸念されている。浜松市では、市民団体が継承活動の促進に向けた取り組みに乗り出した。平和への思いを胸に自治体や関係団体と手を携え、知恵を絞る。 「子どもたちに分かりやすく伝えるにはどうしたらいいですか？」「写真があるとより説得力が増すと思います」－。同市中央区の公会堂。集まったのは昨年度、市が開催した語り部育成講座の修了生たち。講座終了後も定期的に集まって情報交換し、一部は今年7月、ボランティア団体「かたりべの会浜松」を設立した。市や遺族会と連携して戦争体験の聞き取り、小中学校への語り部の派遣事業などに取り組む。 講座では戦争体験者や学識経験者の講話を聞き、話し方の指導などを受けて語り部の認定を受けた。活動をさらに拡大したいとの思いから有志で立ち上げたかたりべの会は、将来的に次の後継者の育成事業の展開も見据える。 市遺族会によると、会員の語り部登録者は現在10人。平均年齢は80歳を超え、大石功会長（79）は「このままだと近い将来の存続さえ難しい。平和の尊さを伝える遺族会の責任が果たせなくなる」と危機感を募らせる。 かたりべの会発起人で会長を務める飯尾忠弘さん（76）は戦後の爪痕が色濃く残る中で育った経験から一念発起し、語り部となった。同会の発足を知り、早速「話を聞きたい」との要望も届いているという。今月15日の市の式典では、会員の一人が発表を行う予定。「戦争の悲惨さ、遺族の苦しみを知りたいという人は多いが、個人の活動には限界がある。仲間と一緒に語り継ぎたい」と決意を新たにする。
空襲解説AIソフト開発 杉浦さん（浜松出身）、飯塚さん（静岡）学びの入り口に期待
戦争の悲惨さをITの力で後世に伝えようと、浜松市出身の大阪大3年杉浦いぶきさん（21）＝大阪府＝、沼津高専専攻科1年の飯塚蘭斗さん（20）＝静岡市駿河区＝が、浜松大空襲を学べる人工知能（AI）ソフトを開発した。戦争に関する質問に回答する仕組みで、関係者は“学びの入り口”として期待を寄せる。 AIに浜松大空襲についての論文を外部情報として取り込み、関連の文章から抜粋して音声で解説する。15日の市戦没者追悼平和祈念式で披露し、同日と16日午前中は浜松復興記念館（中央区）に展示され、来館者も体験できる。 沼津高専在学時の同級生でAIを専門的に学んだ2人は、同校OBの浜松市遺族会の斎藤謙二副会長から制作の打診を受けた。他の自治体や遺族会での活用も見据える。杉浦さんは「記念館で感じたことの答え合わせにも使ってほしい」と話し、飯塚さんは「子どもたちが戦争を学ぶきっかけになれば」と強調した。
