自動運転が今「大きな曲がり角」に直面しているワケ
トーンダウンした感のあった自動運転に関する報道が、2023年後半から再び増えてきた印象がある。自動運転に長く関わってきた産学官の関係者の中では、自動運転の実用化に向けて「潮目が変わった」と指摘する声もある。 【写真】「2024年問題」を前に自動運転のあり方が問われている キーワードは、「社会との共存」だ。 背景には、国の自動運転社会実証に向けた積極的な動きがある。国は、社会受容性の観点で、公共交通を含む商用車(サービスカー)と自家用車(オーナーカー)では、自動運転の社会実装の種類や時期が違うことから、サービスカーを先行させて社会実装を進める考え方だ。
■「2024年問題」を目前に 大きなきっかけは、国土交通省の「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転事業関係)」で、全国62の事業が採択されたことだ。 また、経済産業省が進めてきた、運転者が車内にいない自動運転レベル4の社会実装を目指す「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(通称、RoAD to the L4)」の役割も大きい。 同プロジェクトでは2023年11月、関係各省庁が連携しての第1回「レベル4モビリティ・アクセラレーション・コミッティ」を開催。ホンダとゼネラルモーターズ(GM)およびクルーズ社が、2026年初頭に東京都心部で数十台のサービスをスタートすることに、国として許認可などの手続きの整理を進めているところだ。
物流に関しては、いわゆる「2024年問題」が現実味を帯びている中、問題の解決策のひとつとして、トラックやバスの自動運転の重要性に対する世間の関心が高まっている。 こうした現状を踏まえて、日本での自動運転に関するこれまでの流れを振り返ってみると、2014年度から9年半にわたって、産学官連携の戦略的イノベーション創造プログラム(通称SIP)のひとつとして、自動運転に関する議論が一気に進んだ。 同プログラムの統括者は「2014年時点での日本は、自動運転においてアメリカなどの周回遅れだった」とSIP開始当時を振り返る。それが今では、世界と肩を並べる技術や法整備のレベルになってきたのだ。