グーグルマップ「口コミ」裁判で悪質投稿者に記事削除と200万円の支払い判決も… VS“巨大プラットフォーム”法律的な争いの見通しが明るくない理由
グーグルの口コミの”虚偽性”広まったことが成果
本件裁判はこうした不条理・不公平との戦いでもあり、壇弁護士はとうてい今回の結果に満足はしていない。 「正直、この種の相談は多く、裁判例もかなりあるので、今回の判決でみなさんが騒がれていて驚いています。(今回の判決が医師らの集団訴訟等への動きに一石を投じる形になったが)あんまり、動かないでしょうねぇ。裁判所は、なぜかGAFAの肩を持ちがちですから。成果があったとすれば、グーグルの口コミには虚偽のものも結構あると広まったことかもしれません」
法律の不備を改める必要性
決してあきらめているわけではない。むしろ、問題の本質は見定めている。壇弁護士が指摘する。 「現状の削除の基準は、実体法に委ねられていて、虚偽性の立証まで必要なのか、受忍限度の範囲なのか、それとも、他にあるのか等が毎回争われます。どのような基準を採用するかは担当した裁判官の運次第で、その結果、今回の裁判官のような不合理な判断がされることがあります。ネットにおける誹謗中傷に対して、いかなる情報であれば削除しなければならないのかを、法律で明確にする必要があると思います」 併せて、今回弁護を担当した医療系の口コミ投稿について、なにをもって権利侵害とするかの線引きを明確にする必要性を訴える。 「発信者情報開示については、権利侵害が『明らか』であることが必要で、名誉毀損の場合は、投稿内容が真実ではないことの立証が求められます。具体的には、病院でこのようなおかしな治療を受けたという形の誹謗中傷のケースでは、そのような治療をしていないという立証が求められます。投稿者が特定出来ている場合は、その人のカルテを出せば立証できますが、発信者情報開示請求手続きの場合、投稿者は匿名なのでカルテが特定できない。しかし、過去のカルテ全てをあたるというのは非常に困難なので、反真実性の立証ができていないとか言われる。これは立法時から指摘されている法の不備で『明らか』な要件を見直す必要がある」