青森県内2短大に「絵本の専門家」養成講座 魅力や表現力など学ぶ
子どもたちに絵本の魅力を伝える「認定絵本士」の養成が青森県内の短期大学2校で始まっている。絵本との関わりが深い保育士などを目指す学科で講座を開き、絵本の読み方や選び方に加え、絵本を通じた地域連携の在り方など幅広く学ぶ。読書習慣の推進を図るとともに、学生自身が就職先で能力を生かし、キャリアアップにも役立てる。 認定絵本士は、国立青少年教育振興機構の養成制度。同機構は読書活動推進に携わる「絵本専門士」を認定しているが、若い世代にも裾野を広げようと2019年度に同制度を始めた。認定絵本士を取得後、一定の実務経験を積んで審査を通過すると絵本専門士になれる。 県内では昨年度、弘前市の柴田学園大学短期大学部保育科が認定絵本士の講座を開設。1年間の受講を経て、今年6月に2年生18人が認定を受けた。 青森市の青森中央短期大学幼児保育学科では本年度から始まった。授業に講座を組み込むことで学生全員が2年間で資格を取得でき、1年生28人が受講している。10月の講義では、絵本に関連し「子どもの心をとらえるもの」として人形劇を学習。絵本と人形劇の違いや魅力、人形の種類などを学び、最後は封筒で人形を作って発表し合った。学生たちは、子どもとの対話の仕方について理解を深めた様子だった。 越後谷七海さん(19)は「絵本だけではなく紙芝居なども学べる。幼児期の絵本との関わり方は大切だと言われているので、読み方、見せ方を勉強したい」と話す。嶋田朱里さん(20)は「保育士を目指しており(講座は)将来にとても生かせる。子どもに絵本の世界観を感じてもらい、想像力を広げられたらいい」と笑顔を見せた。 講座で学ぶ「知識・技能・感性」には選択力や表現力など、保育者として必要な要素を含む-と学科長の前田美樹教授。「絵本に意図されている言葉の意味や重みを感じることは考える力を養う下地になる」と、子どもだけではなく学生にも重要な経験だといい「学生が多様な形で地域の人をつなぎ、自身の人生も豊かになることを願う」と話した。 ▼「仲間が増える」と歓迎/「専門士」木村さん(十和田) 県内二つの短期大学で養成講座が開設されている認定絵本士。さらに上の資格に当たるのが「絵本専門士」だ。絵本はもちろん読書に関する専門的な知識を持ち、県内では4人が認定を受けている。そのうちの一人、十和田市の木村明美さん(68)は、認定絵本士の養成について「一緒に活動できる仲間が増える」と歓迎している。 木村さんは、親子読書会「わっこの会」代表として読み聞かせをライフワークとし、絵本の普及活動に長年取り組んでいる。 絵本専門士には2018年に認定された。認定後は個人、書店からの選書依頼、学校や子育てサークルでの講演など、活躍の場はさらに広がった。 絵本の魅力を伝えるため、木村さんは「多くの若い力が必要」と強調。認定絵本士と絵本専門士が地域でつながり、互いに刺激し合いながら活動を広げていくことが理想-として「一緒に企画を立てて運営もできる。これから仕事ができるのが楽しみ」と期待する。 木村さんが住む十和田市には、新たな絵本店や絵本メインの私設図書館が誕生。最近では十和田市現代美術館ともコラボし、気軽に絵本に出会える場所が増えた。「中高生向けのものや大人の絵本会もある」と幅広い世代で楽しめるという木村さん。「子どもに携わる仕事に就かなくても、将来絵本の知識や良さは伝えられる。(養成講座が)もっと広まればうれしい」と話した。 ◇ 絵本専門士と認定絵本士 絵本専門士は国立青少年教育振興機構が2014年度に創設した制度。子どもの言語力や感性、文脈理解力などを養う絵本を地域に普及させる「専門家」の養成が目的。資格取得には、受講者選考に合格した上で所定の授業と修了課題をクリアする必要がある。7月現在、全国で637人が認定を受けている。認定絵本士は大学や短期大学など、全国57カ所に講座を開設(24年度)。絵本の歴史やジャンル、保育との関わりを学ぶほか、作家や編集者らが制作現場を語る授業もある。