「仏壇作りの街」長野県飯山市、コンパクトな新製品で打って出る
長野県飯山市伝統の仏壇製造業界が、県とともに開発した新しいスタイルの仏壇で「新規市場開拓にチャレンジする」と11日、明らかにしました。飯山市は江戸中期以来の仏壇製造の街。古来の大型仏壇の需要が住宅事情の変化などで低迷する中、マンションや手狭なリビングなどにも置けるコンパクトなデザインを開発しました。漆や金箔(きんぱく)の本格技法をそのまま用い、組み立て精度は大型仏壇よりむしろ高くなるなど予期しない付加価値も。海外からの引き合いも含め県内全域、首都圏までのセールスに乗り出します。 【写真】<北陸新幹線>沿線小駅「飯山」の奮闘 選ぶ旅を提案
●新しいスタイル
飯山市の仏壇作りは350年の歴史があり、飯山仏壇事業協同組合の上海(じょうかい)一徳理事長によると最盛期の昭和40年代には事業所が35を数えました。その後、核家族化やマンションなど集合住宅の広がりで、仏間を必要とする大型の仏壇などの需要が低迷。仏壇作りは16事業所まで減りました。現在、年間1000本の仏壇を製造していますが、「バブル期に比べれば売り上げは3分の1ぐらい」。 危機感を募らせた同組合は2015年から県の地域資源製品開発支援センターなどに相談。同センターの五味英紀・製品開発総合プロデューサーらが「伝統の技術を守りながら現代の客に喜ばれる商品を生み出すことが大切。“伝承から伝創へ”の考えで踏み出すことです」と提言し、組合も本格的に取り組む方針を決定しました。飯山商議所、長野県中小企業団体中央会なども支援態勢を取り、新しいスタイルの仏壇開発が始まりました。
●高さ17センチ
新型仏壇のデザインは県内の3人のデザイナーに依頼。第一弾の3モデルがこれまでにまとまり11日、長野市内で協同組合、県など関係者が公表しました。新製品は高さ70センチほどの「見越し宮殿(くうでん)」と、ボックスユニットを3つ全部そろえると高さ1メートル余の「いのりBOX」、高さ17センチとコンパクトな「羽扉(はねとびら)」。ともに宗派は問わないといいます。 見越し宮殿は小型も用意し、いのりBOXは高さ33センチのポータブル型も。羽扉は高さ65センチの台座に載せることもできます。いずれもウレタン漆合成塗料、金箔・本金粉仕上げなどで、彫刻、箔(はく)押し、蒔絵(まきえ)など多くの職人の手が掛かっています。 現代の家族が親しめる工夫を随所に凝らし、全体にコンパクト。見越し宮殿はスマホの遺影を飾ることができ、いのりBOXはユニット家具の組み合わせを応用しました。羽扉はダイニングテーブルの上にも置ける大きさで室内を自由に持ち運びでき、「いつも近くに居てほしい」という希望に応えています。