【専門家解説】“紀州のドン・ファン”不審死 13億円超える遺産の行方 元妻の“夫殺害の罪”有罪なら全額田辺市に入ることに
「紀州のドン・ファン」と呼ばれ、不審な死をとげた和歌山県田辺市の資産家の男性。男性が残した“13億円”以上とされる遺産をめぐる裁判で、6月21日、判決が言い渡された。 【画像】“紀州のドン・ファン”不審死 巨額遺産の行方【法律家が解説】
■「遺言書は有効」だという判決が出る
裁判で遺言書は有効だという判決が出た。これによって13億円以上とも言われる遺産の行方はどうなるのだろうか。 遺産相続に詳しい伊藤勝彦弁護士に聞いた。裁判所は遺言書が有効だと判断しましたが、この判決を率直にどう見たのだろうか。 伊藤勝彦弁護士:判決は予想どうりかなと思っています。この判決は野崎さんによる作成だということを認めて、有効性を認めたわけです。 伊藤勝彦弁護士:裁判の過程で親族側も田辺市側も、何通も筆跡鑑定を提出しています。審理の結果、本人による作成だと認定されたわけですが、筆跡鑑定というのはDNA鑑定とは異なり、白黒がなかなかはっきりしにくいものです。見方によっては違う結論を導くこともできる。もしこの裁判が控訴されると、筆跡をめぐって引き続き重要な争点となっていくだろうというふうに思います。
■『自筆証書遺言』の条件は『本文・日付・氏名・押印』
遺言書とされるものは、赤いペンでメモ書きのようなものだが、これで条件を満たしているのだろうか。 伊藤勝彦弁護士:これでオッケーなんです。『自筆証書遺言』のポイントは4つしかありません。『本文』『日付』『氏名』『押印』です。(遺言書とされるものの写真を見ると)本文を書いてあり、日付と名前が書いている。これが“自筆”、自分で書いたということです。あと4つ目の条件の印鑑があります。近くにあった紙とペンでさらりと書いても有効は有効なんです。 親族側も筆跡鑑定を出しているが、これは認められなかったのか。 伊藤勝彦弁護士:何通も出てるんですけど、判決では理由を詳細につけて、この筆跡鑑定は信用できないというふうに導いています。
■「相続は争続」とも 『公正証書遺言』が確実
今回のような遺産をめぐるトラブルというのは実際に多いのか? 伊藤勝彦弁護士:特にこういった『自筆証書遺言』、自分で書く遺言であると、本当にその人が書いたのか、他の人に書かされたのではないかというような疑問が挟まれまして、有効性をめぐって訴訟になることもよくあります。 伊藤勝彦弁護士:トラブルを起こさないためには、本人による作成だということをきっちり後で確認できるようにするべきです。一番確実なのは公正証書による遺言作成ということになります。公証役場に出向いて遺言書を作ります。 自分で書いた自筆証書遺言であったとしても、法務局に保管してもらうという制度ができています。保管のプロセスの中で、ご自身が出向いて手続きをするとことになるので、本人による作成であることの争いが非常に少なくなります。 ジャーナリスト 浜田敬子さん:『相続』は『争続』と言われることもあるぐらい、ものすごくもめるケースが多くて、私も身近なところで聞くんです。結果的に、遺産をめぐってその後の親族関係まで悪くなってしまうケースがある。それを避けるためにも、きちんと公正証書にしておくのは、その後の家族関係を健全に保つためにも大事なのかと思います。