亡き母の相続手続き「出生から死亡までの戸籍謄本」の収集に疲労困憊…なぜ必要なの?【相続専門税理士が解説】
相続手続きの際、銀行預金の解約や不動産の相続登記など、ほとんどの場面で「戸籍謄本」の提出が求められます。ここでは、相続時に必要となる戸籍謄本の種類や記載内容、入手の方法や費用について見ていきます。公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
相続手続きに必要な「戸籍謄本」…その取得方法は?
先日、母が他界しました。これから相続手続きに着手しますが、知人から「〈お母さんが生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本〉を全部集めるのが一苦労だよ?」といわれました。実際やってみると、本当に大変でウンザリしています。この作業はなぜ必要なのでしょうか? 40代会社員(横浜市港北区) 戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場、実家がある街の役場でしか取ることができませんが、本籍地の市区町村役場が遠い場合には、郵送で請求することができます。コンビニ交付に対応している場合は、セブンイレブンやローソンなどのコンビニの機械からも取得することができます。 しかし、今回のケースは、それだけでは完了できません。なぜなら、亡くなった方の戸籍謄本は「出生から死亡まで」のものを揃える必要があるからです。
被相続人の出生→死亡まで、連続した戸籍謄本が必要
なぜ、出生から死亡までの戸籍謄本をそろえる必要があるのでしょうか? それは、亡くなった人の相続人を調査して、相続人を確定するためです。そのためには「生まれてから亡くなるまで」の間、いつ身分に変動があったか、出生から死亡までのすべての連続した戸籍謄本を集めて調査する必要があります。 結婚したり、離婚したりすると戸籍は変動しますし、養子縁組をしても変動します。これらをすべて連続させて、死亡から出生まで遡ります。 「相続人は私たちきょうだいしかいない」と思っていても、戸籍を調べてみると、片親違いのきょうだいの存在が判明するなど、想定外の法定相続人が見つかることもあります。 たとえば、母親が養子に入っていた場合、死亡時の戸籍謄本から、その前、さらにその前とひとつひとつ遡って、「改製原戸籍謄本」「除籍謄本」を取り寄せる必要があります。 手順は以下の通りです。 (1)被相続人の最後の戸籍謄本または除籍謄本をとる (2)そこに記載されている内容を読み、その前の改製原戸籍謄本、除籍謄本の本籍地などを読み解き、ひとつずつ順番に古い戸籍に遡り、本籍地の市区町村役場に請求していきます。 (3)そこから順次遡り、出生まですべての戸籍を揃える 逆に、相続人の戸籍謄本は、相続人が健在であることを示すためのものなので、出生まで遡る必要はなく、現在の戸籍謄本があれば大丈夫です。戸籍謄本でなく、戸籍抄本でも問題ありません。
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