余命わずかな子どもたち「生きたい」と願ったら「不老不死に!?」そこで「大人になりたい」と願った顛末は?【作者に聞く】
余命わずかな子どもたちが「生きたい」と願ったら、時の動かない空間に囚われた。その里は、子どものままの姿で生きる「神隠しのような場所」。不老不死の世界へ入り込んだうないは、ある子どもが「大人になりたい」と願っていることを知り…。今回は、ようら(@nw5dB8UL5z61936)さんが描くミステリー漫画「世迷子」を紹介するとともに、制作の経緯を聞く。 【漫画】本編を読む ■「まだ生きたかった」里に残るか外に出るか、どちらが幸せだったのかはわからない 歩いていると霧もやが出て、道に迷ってしまった、うない。霧を抜けた先、里の子どもに出会う。最年長である陣内は「ここには子どもしかいません。不死の身で年も取らない、痛みも感じない、空腹も感じない」という。 里に呼ばれた子どもたちは、病気を患っていたり、寿命がわずかなものもいた。陣内はずっと病気がちで床に臥せていた。何のために生きてきたのかわからなかったが、「生きたい」と願ったら、この里に呼び寄せられた。浄土のような場所で、頼られ、生きる喜びを知ったという。 しかし、里の子どものなかには変化を望む者もいた。足の病が治って楽しく暮らしていた「かや」は、ずっと成長しない自分が嫌だ「大人になりたい」という。里の子どもが「希望」を持ったとき、うないの持つカカメが真実を写しだそうとした――。 「暗匣(あんばこ)シリーズは、カカメ(真実を写し出す箱)などファンタジーな要素も少しありますが、基本には現実的な世界観で話を作っています。でも、たまにおかしな世界の話も描きたくなるんです。だから、今までの世界観を崩さず合理的におかしな世界を描けないかと考えて、『神隠しに遭った先の場所』を舞台にした話を思いつきました」と、ようらさんは本作の制作の経緯を話す。 カカメに取られたあと「里はなくなってしまった」ように見えたが、「個人的には里は無くなっていないと思います。うないたちはいわゆる招かれざる客であり、里の『主』も一度は穏便に外に出してくれましたが、カカメが興味を持って戻ってきてしまった。そして『主』の怒りを買って、『主』のパンチで強制的に追い出されてしまったのです。撮られることを選んだ「かやたち」もいっしょに出され、残ることを選んだ陣内は主のパンチを逃れ、まだ里の中…という感じです。」神隠しの里から「出たい」と願った子どもたちだけが、うないと現実に戻されてしまった。 不死の体になり、始めは喜んでいた、かや。しかし、徐々に「大人になりたい」という気持ちが生まれるところが切ない。夢を抱いたかやの気持ちが、里のバランスを壊したのだろうか?と聞けば、「正確には、死期の近い子どもたちが『時の動かない空間に囚われていた』というイメージなので、厳密には死んではいません。なので、『外に出れば成長して大人になれるのでは?』と、かやたちは希望を持っていた。でも、外の時間が経ちすぎていたため、身体がついていかず塵となってしまった…。里に残るか外に出るか、どちらが幸せだったのかはわからない結果となってしまいました(ようらさん)」結局は、迷い込んだうないが「里の安穏をかき乱してしまった」というわけだ。 「不老不死」のまま「永遠の子ども」で生きていく神隠しの里。永遠に子どものままいることが本当に幸せなのか。夢を持ち、未来へ進むことが幸せなのか。ようらさんは「プロを目指していた時期もあった」という。「今はpixivやホームページなどで描くようになって、ありがたいことに読んでいただけたり反応をいただけたりして、とても楽しく描いています。なので、描きたいものを自由に描き続けることが今一番の目標です」と、話す。 取材協力:ようら(@nw5dB8UL5z61936)