「転売ヤー」に対抗、警備の仕事を続けながらガンプラ愛伝える店長 自力改装した農村のプラモデル店に愛好家続々
長野県内最北のプラモデル店「ちゃんちゃん」(中野市田上)は、高社山(こうしゃさん)(1351・5メートル)の山裾に広がる農村地帯にある。店長の山岸幸平さん(33)が約1年5カ月前、新型コロナ下でロボットアニメ「機動戦士ガンダム」のプラモデル(ガンプラ)が品薄になったのを機に開店。茶髪にサングラス、日焼け顔の見た目とは裏腹に、気さくな人柄が県内外からお客を呼び寄せ、愛好家たちのコミュニティーの場にもなっている。 【写真】自宅の離れに開店した「ちゃんちゃん」の外観
広さ24畳の店内に常連客が次々訪れた28日午後、長野市の会社員宮嶋隼也さん(33)は、ロボット「マジンガーZEST」のプラモデルの完成品を引っ提げて来店。山岸さんが「(プラモデルの)顔がイケメンじゃん」と褒めると、宮嶋さんのほおが緩んだ。
店内に並ぶ約500個の完成品は、山岸さんや宮嶋さんのような常連客が作った物ばかり。週1回ペースで通う宮嶋さんは「いろんな愛好家が集まり、情報交換できる」。地元に限らず松本、伊那、上田市、新潟県上越、長岡市から通う客もいる。
「このパーツはどこに付けるの」「この辺かや」。美少女プラモデルを持ち寄った長野市の別の常連男性(39)は、山岸さんと会話が途切れない。「つい長居しちゃう」と店長の人柄に引かれている。
山岸さんは幼い頃から、父親の進さん(63)の影響を受けプラモデルにはまった。球児だった高校時代に離れたが、都内の専門学校を経て地元に就職して落ち着いた約10年前から、ガンプラなど「ロボット系」の作品を本格的に作り始め、仕事の疲れを癒やすだけではない「生きがい」になっていった。
新型コロナの感染拡大がそんな日常を壊した。巣ごもり需要でガンプラの人気が急上昇し、大量に仕入れて高額転売する「転売ヤー」が増え、入手困難になった。頭の片隅にプラモデル店の開業を思い描き始めていた山岸さんは「自分で問屋から仕入れることができれば、転売ヤーに対抗できる」と心を決めた。