家系図って作れるの? 先祖代々の農家にあこがれ…記者のルーツを探ってみた
「先祖代々受け継いだ農地だから」。取材で農家からこの言葉を聞くたびにうらやましく思っていた。地方に根を下ろして暮らす農家と違い、祖父の代から故郷を離れてしまった自分は先祖についてほとんど知らないからだ。自分の先祖はどんな人物だったのか。戸籍法の改正をきっかけに、家系図を作ってルーツを探った。 戸籍から作成した記者の家系図 戸籍法改正で始まったのは戸籍の「広域交付」制度。従来は本籍地に登録した市区町村でしか請求・交付できなかった戸籍証明書が、どの市区町村窓口でも可能になった。結婚や相続などの行政手続きで必要になることがあり、制度の導入で労力が軽減される。 広域交付は本人の戸籍に加え、直系に限れば、上の世代の血族(尊属)や下の世代の血族(卑属)の戸籍も請求可能。一つの市区町村の窓口で、家系図作成に必要な戸籍証明書をまとめて申請、取得できる。
申請書は自治体によって異なるが、①窓口に来た「請求者」の個人情報②取得したい戸籍の「対象者」の個人情報と請求者との関係③必要な戸籍の範囲──などの記載欄がある。 記者の場合、曽祖父まで個人情報が分かっていたため対象者を曽祖父とした。都内の区役所で家系図作成の目的を伝えると、戸籍の記録を確認し、取得可能な戸籍を調べてまとめて発行してくれるという。 ただ、直系の親族全ての戸籍を取ろうとすると、20~30人の戸籍があり、取得に時間と費用がかかる。そこで、対象を父系の親族に限定し、記者の姓を名乗る親族を調べることにした。 1週間後、再び窓口を訪れると、5部の戸籍証明書を手渡された。記者から見て、6代前の先祖まで戸籍が現存し、証明書が取れたという。手数料は1部750円で3750円の費用がかかった。
江戸時代に到達
戸籍は世帯主を筆頭に作成される。子どもは親の戸籍に入っているが、結婚を機に親の戸籍を抜けたり、親が亡くなって家督を相続したりすると新しい戸籍が作られる。戸籍の証明書には戸籍の移動記録などが記載されており、この記録をたどると遠く離れた先祖の名前や本籍地まで調べることができる。 まず、起点とした曽祖父「孫一郎」の戸籍を確認すると、父の欄には「市蔵」の名前があった。記者から見て高祖父に当たる尊属だ。「孫一郎」の前の戸籍の記載欄には、「喜代次」とあり、「孫一郎」の祖父に当たる関係と読み解けた。 「喜代次」が筆頭の戸籍を確認すると、長男「市蔵」は家督相続のために戸籍に残っていたが、「喜代次」よりも先に亡くなったため、孫の「孫一郎」が家督を相続したことが分かった。このように、1人ずつ戸籍に記載された情報を読み取り、先祖の関係を整理して家系図を作成した。 記者の場合、7代前の先祖まで名前が分かった。生年が分かる親族で最も古いのは、6代前の先祖「惣吉」で文政7(1824)年生まれ。西郷隆盛の3歳年上になる。家系図は遠縁の親族を省略したが、連なる親族は40人にもなった。