F1の1000回目開催となる中国GPがレッドブル・ホンダ浮上の試金石となるのか?
当初、メルセデスもレッドブルと同じコンセプトのフロントウイングで1回目のテストをスタートさせたが、そのフロントウイングでの走りが芳しくない結果に終わると、2回目のテストにはフェラーリのアイディアを採り入れた改良版を投入。開幕戦では1-2フィニッシュと圧勝した。 そのため、ヨーロッパのメディアは「レッドブルもフェラーリ型のフロントウイングに変更してくるのではないか?」と色めき立っている。その可能性がないわけではないが、現在レッドブルが抱えている問題は、空力のコンセプトそのものというよりも、まだ今年のマシン「RB15」のポテンシャルを100%引き出せていないように思えるからだ。 その理由は、開幕直前のテストの終盤にピエール・ガスリーがマシンをクラッシュさせたことだった。テストでは1台のマシンを2人のドライバーが1日ごとに交代してテストしていたのだが、その1台をクラッシュさせたために、翌日のフェルスタッペンのテストは限られた内容となってしまった。というのも、クラッシュしたマシンには最新仕様の空力パーツがいくつか装着されていたのだが、予備のパーツがなかったために、古いパーツを代用してテストしたからだ。そのため、最新仕様のパーツを装着したときのセッティングが煮詰めきれないまま、開幕戦を迎えてしまった。 さらに状況を難しくしたのは、開幕戦にレッドブルが再び新しいフロントウイングを投入したことだった。この新フロントウイングはもともと3戦目の中国GP(4月12日から14日)で投入する予定で開発が進められていたものだった。ところが、テストで開幕戦仕様のフロントウイングをクラッシュで失ったため、レッドブルは開幕戦仕様のフロントウイングも新たに製造しなければならなくなった。 それならば、わずか2戦しか使用しないウイングにお金をかけるよりも、中国GPで投入する予定のウイングの開発・製造を前倒ししたほうが良いと判断したわけだ。 だが、本来の開幕戦仕様のフロントウイングでさえ、きちんとしたセットアップのデータがそろっていなかったのだから、2戦前倒しで投入された最新のフロントウイングを使いこなすのは至難の業となった。その証拠に、バーレーンGP直後に、同じバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われた合同テストでは、初日にマシンを走らせたフェルスタッペンがトップタイムをマークした。そして、こう語った。 「バーレーンGPの週末に、なぜリアタイヤのグリップがなかったのかを知ることができたと思う。今後に向けて多くの収穫があった」 そのバーレーンでのテストから1週間。12日からフリー走行が始まる第3戦の中国GPで、レッドブルは新しい空力パーツを投入するのか。さらにバーレーン・テストで得たデータから、どのようにマシンをセットアップしてくるのか。1000回目のグランプリとなる記念大会は、レッドブル・ホンダにとって1001回目以降に浮上できるかどうかの試金石となる重要な一戦となる。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)