久保建英は左サイドに回ってヨーロッパリーグ初勝利 「効率重視」の戦術に自分を落とし込んだ
【縦に切り込みクロスを上げる】 「周りの力を引き出す。その適応力、連係力こそ、タケ(久保)の魅力と言える」 2000年代、ラ・レアルの"ワンクラブマン"として500試合以上に出場したレジェンド、シャビ・プリエトは、昨年行なったインタビューでそう説明していた。 「タケのプレーヤーとして最大の才能は、ひと言でいえば、Desequiribrio(均衡を崩す)にあるだろう。単純に個人のプレースピードも速いが、チームメイトと連係することによって、さらに攻撃を速めることができる。そのアドバンテージで、守備陣が構築したバランスを崩せる。それが、Determinante(プレーを決定する)の選手になることにもつながっているんだ」 スタートポジションの右から左への変化は、主に他の選手との相性により行なわれたのだろう。 この日、ラ・レアルはウマル・サディクがワントップで先発だった。サディクはスピード、パワーが際立つFWだが、ポストワークは苦手で、周りとのコンビネーションがいいタイプではない。広大なスペースを生かし、速い攻撃を使い、カウンターで生きるタイプだ。 久保は右サイドにいる場合、カットインからの左足シュートを得意としている。しかし、それだけではすぐに封じられるために、トップや周りの選手とのコンビネーションが欠かせない。だからこそ、アレクサンダー・セルロート(現アトレティコ・マドリード)のようなストライカーと相性がよかったわけだ。 だが、サディクにボールを預けても思ったようなリターンはないし、クロス1本でも合わないことが多い。そこで、この日は久保が左でプレーすることになったのだろう。適応力に優れた彼は、チームが掲げた「縦に速く」の攻撃にもマッチした。左サイドでスピードを生かし、左利きウイングとして縦に切り込み、クロスを上げた。実際、ラ・レアルが得点した2ゴールの"前触れ"のシーンでは、久保が縦に攻撃を仕掛けて全体を押し込んでいた。