新紙幣発行による政府のねらいとは。新紙幣がタンス預金活性化やキャッシュレス推進につながる理由を解説
2024年7月3日、一万円札、五千円札、千円札のデザインが変わり、新紙幣となりました。 ◆【写真3枚】日本のキャッシュレス利用率をグラフでチェック 街中でもちらほらみかけるようになった新紙幣ですが、紙幣のデザインを変えることによって政府はどのような狙いがあるのでしょうか。 今回は新紙幣というテーマから、新紙幣発行の目的や、新紙幣に関する注意点等を解説していきます。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
2024年7月から20年ぶりに新紙幣が発行
2024年7月3日、財務省と日本銀行は一万円札、五千円札、千円札紙幣を新しいものへと改刷しました。 実に20年ぶりとなる今回の紙幣ですが、大きく旧紙幣と変わった点として「絵柄の人物」や「立体ホログラム」があげられるでしょう。 一万円札は渋沢栄一、五千円札は津田梅子、千円札は北里柴三郎となっています。 千円札と五千円札に関しては、20年ぶりに、一万円札に関しては40年ぶりの変更となりました。 では、紙幣のデザインを変更することで国はどのようなねらいがあるのでしょうか。
紙幣デザイン変更のねらい
導入にはコストが多くかかる新紙幣。一見メリットがあまりないように見えますが、今回の紙幣更新の狙いはどこにあるのでしょうか。 様々な狙いが考えられますが、今回は2つほど見ていきます。 ●紙幣デザイン変更のねらい(1)キャッシュレス化の推進 1つ目はキャッシュレス化の推進です。 諸外国と比べて低いといわれる日本のキャッシュレス決済普及率ですが、現状はどれくらいの利用率なのでしょうか。 経済産業省の資料から見ていきましょう。 2023年のキャッシュレス決済比率は堅調に上昇し、39.3%となりました。 内訳は、クレジットカードが83.5%、デビットカードが2.9%、電子マネーが5.1%、コード決済が8.6%でした。 <キャッシュレス決済の利用率推移> ・2017年:21.3% ・2018年:24.1% ・2019年:26.8% ・2020年:29.7% ・2021年:32.5% ・2022年:36% ・2023年:39.3% 政府は2019年に「2025年6月までに、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指す」としており、目標値に向けて順調に推移していることが見受けられます。 ただし、一般社団法人キャッシュレス推進協議会によると、日本のキャッシュレス決済比率はまだ低位に位置しています。 最上位の韓国ではじつに95.3%がキャッシュレス決済を利用しており、キャッシュレス決済比率4割を達成したあとも継続したキャッシュレス推進が進んでいくでしょう。 ●【参考】新紙幣がキャッシュレスの推進に有効なワケ 一見、お互いにそこまで影響を及ぼすことの無さそうなキャッシュレス決済の促進と新紙幣の発行ですが、どのようなからくりがあるのでしょうか。 新紙幣の発行に伴い、小売店やATMなど、紙幣を扱う設備を備えている場所にとっては、更新のコストが発生します。 特に個人店の券売機やバスの精算機などにとっては大きな負担でしょう。 実際に、新紙幣や新500円玉が使えないお店を見たことのある方も多いはず。 新紙幣発行によって事業者や消費者に現金を使うことの負担や煩雑さを認識させることで、彼らにキャッシュレス決済の利用を促すことのできる可能性があるというわけです。 ●紙幣デザイン変更のねらい(2)タンス預金の活性化 キャッシュレス決済の促進以外にも考えられるもう1つの目的がタンス預金の活性化です。 タンス預金とは「家庭で保管されている現金」のことです。日本にはタンス預金が数十兆円規模で存在するといわれており、マネーロンダリングや脱税の温床となりうるため、いかにタンス預金を活性化させるかは政府の頭を悩ませている問題の1つです。 新紙幣の導入によって「旧紙幣を使いづらい」という心理が働き、タンス預金を使うことによって経済が回るとともに、国がお金の流れを管理・把握しやすくなるのがねらいのひとつでもあるでしょう。 では、タンス預金をすることで、家庭が抱えるリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。 まずは、空き巣被害や災害などで現金を失うリスクがあります。 銀行に預けていれば、1000万円までならペイオフの対象となり保護されますが、自宅で保管していると保護されることはありません。 また、多額の現金を家族の知らないところに保管しておくことは相続時のトラブルの種にもなりうるほか、現金保有だけでは昨今のインフレに対抗できず、ひたすら目減りしていくというデメリットもあります。 では、新紙幣を活用する際に私たちが気を付けておくポイントはどこにあるでしょうか。