長野県松本市の図書館整備悩ましく 本館...設備老朽化 新館...まちなか構想振り出し
長野県松本市が来年2月末で閉店する松本パルコの後利用計画を白紙にしたことで、同計画に盛り込んだ新図書館の設置も立ち消えになった。市教育委員会は引き続き、中心市街地や駅周辺への設置を目指して別の候補地を探す考えだ。一方、中央図書館(本館、蟻ケ崎2)は設備の老朽化が著しい。新館と本館の二重投資を避けたい市教委は、難しい対応を迫られている。 パルコ後利用計画では、運営会社「パルコ」が閉店後に北側新館を改築して下層階で商業施設を運営する一方、市が上層階を借りて図書館を軸とした複合施設を設けるとしていた。市教委は、開放的でにぎわいを生む新スタイルの「まちなか図書館」を構想。実現すれば、本館の機能は調べ物やバックヤードなどに限定する想定だった。 しかし、後利用が一大争点になった市長選後の4月、パルコが協議打ち切りを市に伝え、候補地探しは仕切り直しになった。教育委員からは「白紙は残念。まちなか図書館のわくわく感が続くように取り組んで」との要望が出ている。 伊佐治裕子教育長は取材に対し、中心街や駅周辺に新館を設ける方針は変えないとし「(本年度に描き直す)中心市街地再設計の『見取り図』の中に入れてもらいたい」と話す。 一方、開館から32年がたつ本館は空調の効きが悪く、雨漏りするなど設備の不調が相次ぎ「対応は先延ばしできない状況」(市図書館)となっている。市は約2年間休館して設備を更新し、併せてセルフ式の貸し出しを可能にするICタグ導入を行う方向で、実施時期を含めて検討している。ただ新館構想をにらみ、改修規模は最低限にとどめる考えだ。 駅周辺に設置したいけれど、実現が見通せない新館。設備が限界に近づいている本館。二つの課題は密接に関わっているだけに、今後の動向が注目される。
市民タイムス