【台風13号から1年 問われる備え】(上) 自主防災の動き広がる 組織強化、避難経路点検 福島県いわき市
福島県内で初めて線状降水帯が発生し、浜通りに大きな被害を出した台風13号に伴う豪雨から、8日で1年となる。いわき市では住民自ら防災士の資格を取り、自主防災組織を強化するなど相次ぐ災害に備える動きが出ている。行政による河川の改修は完了までに長期間を要する中、多くの災害を経験してきた人々は「自助力」を高めつつ、早期のハード整備を求めている。 いわき市南部の沿岸部にある錦町大倉区。国道6号の東西に広がる一帯は台風13号以前にも、東日本大震災の津波や2019(令和元)年10月の台風19号などに見舞われてきた。 「命に関わる災害が繰り返し起きている」。大倉区の自治会副会長正木秀明さん(69)によると、1年前の大雨は地区の排水力を超え、内水氾濫を招いた。正木さん宅を含む約180世帯が被害を受けた。鮫川と新中田川に挟まれた地域は内水氾濫が起きやすく、自治会は排水路やポンプ場の増強を市に求めているが、実現するかは未定だ。
◇ ◇ 震災では液状化現象の被害を受けた正木さんは「自分たちの命を守るため、できることをやろう」との思いから2022年に防災士資格を取得。周囲に取得を呼びかけてきた。大倉区内の1~4区で最多の275世帯が住む4区では、この数年で正木さんら5人が防災士となった。 大倉区は防災士を中心にコロナ禍で活動の途絶えた自主防災組織も立て直している。6月に行った防災訓練には住民約70人が参加。正木さんらは市と連携して実施計画を練り、台風13号での浸水域を踏まえた避難経路の点検などに励んだ。4区を構成する3町内会のうち、自主防災組織がない南城・成沢町内会で年内に組織をつくる動きもある。 ◇ ◇ いわき市では5年前の台風19号で死者14人が出た。昨年の線状降水帯による豪雨では短時間に降雨量が急増。避難が進まない段階で川があふれ、救助要請が相次いだ。市は防災士資格の取得費の補助や防災士の組織化などを通し、自助・共助に励む市民を後押ししている。市災害対策課の本田文徳係長(51)は大倉区の活動を「防災士が地域の防災リーダーを担う点で理想的」と評価する。