真田ナオキ、師匠の吉幾三が手がけた新曲で狙う紅白歌合戦「師匠への恩返し、ファンのためにも出場できるよう成長したい」
吉幾三に「弟子になれ」と見出されデビュー
地方公演では歌うこと以外に楽しみはないです──真田はきっぱり言い切った。 デビューは2016年。「恋する確率100%天下無敵のノックアウトボイス!」のキャッチフレーズで親しまれる、個性的なハスキーボイスを武器にしている。吉幾三に「おまえ、おもしろい声をしているからおれの弟子になれ」と見出され、デビュー曲の『れい子』以来、吉が楽曲の作詞作曲を手掛けている。 最新曲は『246』。赤坂や青山、渋谷界隈を抜ける国道246号線を気になる2人がドライブする疾走感あるロック調演歌で、コンサートでは自ら「勝負曲」と紹介して盛り上がった。 「師匠(吉)から“おまえにぴったりの曲だぞ”と渡され、いまの自分の節回しはすべて出ていると思います。『恵比寿』『渋谷で…どう?』に並ぶ、歌手・真田ナオキを象徴する1つのイメージとして愛していただき、今年はこの曲にかけています!」
見つめる先はファンと行く紅白歌合戦!
真田が語る“勝負”とはNHK紅白歌合戦への出場を意味する。2020年に第62回日本レコード大賞最優秀新人賞、2022年に第36回日本ゴールドディスク大賞ベスト・演歌/歌謡曲・ニュー・アーティストなど、数々の賞に輝いてきたが、大晦日の舞台にはまだ立てていない。 「紅白歌手となって師匠に恩返しがしたいですし、“私の夢なの”“おれの夢なんだ”と言って一緒に目指してくださるファンの皆さんのためにも、紅白に出場できるよう成長したいですね」 今年に入り、ファンとの心を揺さぶられる出会いがあった。 「高齢の男性が1枚のお写真を持って、コンサートにいらしたんです。“亡くなった妻がいつも応援していたんです”と打ち明けてくださり、それからいつも、お写真の奥さまと一緒に客席からペンライトを振ってくださって。ご夫婦の絆を感じるためにぼくの歌を聴きに足を運んでくださると思うと、ジーンと胸にしみてきたんです」 この日も娘や孫が作ったうちわを持参するファンが多く、家族の輪に自分の歌があることを喜んだ。そんな真田も、コロナ禍には歌をやめたくなる心境に陥り、苦しんだと明かす。 「いま、笑顔になってほしいのにその場を提供できない。無力さのあまり心が折れそうになりました。そんなぼくの背中を押してくれたのがファンレターに綴られた、思いのこもった言葉の数々。お手紙は宝物で、事あるごとに読み返しています」 言葉に救われ、感性の表現をより研ぎ澄ますようになった。 「歌い手として、聴く人の心へ届けるために歌っている。ぼくは三浦春馬さんのような俳優さんが歌う歌が好きなのですが、それは言葉に力が宿っているから。演技力で情感がこめられて、言葉が生きているんです。そんな言葉をぼくも歌にのせていきたい」 往年の名曲も言葉をフォーカスして独特な、本人いわく“気持ち悪い”聴き方をするという。 「美空ひばりさんの『愛燦燦』で“人生って 不思議なものですね”の『不思議』のパワーがすごいじゃないですか。その言葉だけ延々繰り返して1曲を20分くらいかけて聴きます。その歌い手だからこその、言葉を伝える節回しを研究しているんです」 日常でも言葉を意識して生活している。日々の風景を綴り、心を文字にして整える。大食漢で一晩4合ほど食べていたごはんは半分の量になった。食べるよりも歌と向き合う時間が大切に感じると語る。唯一無二の声色を持つ真田は、歌心にも自分だけの“色”を探している。 ◆歌手・真田ナオキ さなだ・なおき。1989年12月22日生まれ。2020年1月にメジャーリリース第1弾シングル『恵比寿』を発売し、自身初のオリコン週間シングル演歌歌謡ランキング1位を獲得。その年末には、日本レコード大賞 最優秀新人賞を受賞。 撮影/田中智久、平野哲郎 取材・文/渡部美也 ※女性セブン2024年10月10日号