米雇用のけん引役、医療分野で採用ペース鈍化-労働市場不安定さ増す
(ブルームバーグ): 米国では新型コロナ禍後の雇用の伸びを医療セクターが主にけん引し、2021年以降の全米新規雇用に占める割合は約2割に達した。しかし、その医療セクターで採用ペースが鈍化しつつあり、労働市場全般の不安定さが一層増すように思われる。
8月に企業で新規採用された医療従事者は3万900人と、過去2年余りで最も少ない。医療セクターの労働力(1770万人)の半分が病院と介護施設で雇用されているが、両者の減少が特に顕著だ。米労働省の労働統計局(BLS)が4日発表する雇用統計では、9月も労働市場の減速が続いたかどうか明らかになる。
高齢化に伴う医療ニーズの高まりが時間と共に継続的な雇用拡大を支えるはずだが、最新の数字を見る限り、ハイペースのキャッチアップ採用が続いた後、労働需要は幾分減少しつつあるようだ。成長の原動力として経済の医療セクターへの依存がますます高まっており、労働市場全般の採用トレンドは当面抑制された状態が続く可能性がある。
医療政策を専門とするジョンズ・ホプキンズ大学のGe Bai教授は「医療は米国で最も多くの人々を雇用するセクターの一つだ。医療セクターの労働力のわずかな変化も、全米の雇用に影響を与えると考えられる。過去の増加は、コロナからの回復傾向を反映しただけかもしれず、今は若干後退している」と分析した。
コロナ禍後の医療セクターでの採用ブームに伴い、米国の労働人口全体に占める同セクターの割合は過去最も大きくなった。医療セクターでは今や労働人口の11.2%が雇用され、 その割合は1990年の約7.5%から拡大した。
21年の労働需要の急増とそれに続く減少は、求人情報のデータで明らかだ。22年のピーク時には、医療関連の求人数はコロナ禍前を90%上回っていたが、BLSが1日公表した雇用動態調査(JOLTS)報告によると、今年8月は29%上回るに過ぎない。
レイオフは引き続き抑制されているが、医療セクターの雇用総数に占める採用率は21年初め以降で最も低くなった。