【解説】欧州で相次ぐ中国スパイ事件 厳格に管理された中国諜報活動の実態と日本に求められる施策とは
ドイツで深刻な実態が明るみに
ドイツ当局は22日、中国の情報機関のためにスパイ活動をした容疑で、ドイツ人の男女3人を逮捕したと発表した。主犯のドイツ人は、中国国家安全省の指示を受け活動するエージェントで、ドイツ人夫婦が経営する企業を通じてドイツの大学と協定を結び、その一環として、軍艦等に使用される船舶用エンジンに関する機械部品に関する情報を収集していたという。 【画像】欧州で相次いで明るみになる中国諜報事件 日本に求められる施策とは また、容疑者3人は、EUのデュアルユース規制(※軍民両用の物品に関する輸出規制)の対象であるにもかかわらず、中国国家安全省から支払いを受けてドイツから特殊レーザーを購入し、無許可で中国に輸出した疑いもある。 容疑者らの諜報活動は2022年6月以前から始まったとみられ、ドイツ当局は容疑者らを外国貿易決済法(FTPA)に違反した疑いで告発、地元メディアによれば、最長5年から10年の懲役または罰金に処される可能性があるとのことである。 この逮捕は、オラフ・ショルツ首相が 中国を訪問したわずか1週間後に行われ、ドイツ当局は検挙のタイミングを見計らっていたとみられる。 本事件は、中国国家安全省の工作員が運営したエージェントである主犯のドイツ人と、共犯のドイツ人男女による諜報活動と見られる。ドイツで中国工作員が諜報活動を行うには、当然、外見的障壁があるため、現地のエージェントを活用した基本的な構図の諜報活動であったと推察される。 また、23日には、ドイツ当局は、中国に情報を渡していたとして、右派政党の「AfD・ドイツのための選択肢」の欧州議会議員・マクシミリアン・クラー氏のスタッフであるジャン・G氏(43)を逮捕したと発表。前述の事件との関係は示されていない。 ドイツ当局によれば、拘束された男はドイツ国籍で、ドイツと中国の二重国籍を有しているとの情報もあるが、長年にわたりスパイとして欧州議会の情報を中国国家安全省に提供していたほか、ドイツにいる中国の反体制派の動向を探っていた疑いがあるという。 この容疑者が補佐を務めたクラー議員は親中派であり、ウイグル人権問題について反中プロパガンダなどと発言したり、台湾やチベットが中国のものであると主張していたとの報道もあり、中国による政治工作の影響が及んでいた可能性もある。 この事件では、反体制派の情報を中国国家安全省に提供していたとのことだ。しかし反体制派の連れ戻しに関して日本国内でも問題になっている「海外秘密警察」とは、関係はないだろう。 なぜなら、海外秘密警察は中国地方政府単位の公安局の活動の一環であり、今回の事件の情報提供先である中国国家安全省とは別の組織系統だからだ。