オタク文化への偏見覆す芸術性に信念 コスプレ作品表現の場を創り出す挑戦
作品性にこだわった「コスプレ写真」を撮影する写真家は、そのアプローチもさまざまだ。コミケなどコスプレイベントで撮影して、その魅力に取り憑かれた者もいれば、まったく別のアプローチから本格コスプレ写真の世界に魅了された者もいる。今回は、もともと「廃墟写真」の撮影を嗜好していたが、その廃墟とコスプレを融合させることに作品性を見出したHEBUさんの「こだわり」について、作品とともに話を聞いた。
全国でも珍しい「コスプレオンリー」写真展を立ち上げ
大阪で広告や商業誌のエディトリアルデザインなどを生業とするHEBUさんは、2009年ごろから趣味でコスプレ写真を撮り始めたという。 「もともと廃墟や“工場萌え”系の写真集などに刺激され、廃墟の写真を撮っていたんです。そのころ、ちょっとスランプに陥って違うジャンルの写真を模索していたとき、とある廃墟で超有名なカメラマンとコスプレイヤーが撮影をしていたんです。コスプレというものを撮ってみるかという軽い気持ちから始めたんですね(笑)」 その後、コスプレイベントに参加したり、当時流行っていたSNS「ミクシィ」のコミュなどに参加し、何人かのコスプレイヤーと仲良くなった。その中で「知り合ったコスプレイヤーたちが、作品に対する熱い気持ちをぶつけてきてくれたんです。これは真剣に向き合わなければアカンなと思いました」 広がったコミュニティの中で、作品志向の写真家やコスプレイヤーなどに声をかけ、地元・大阪のギャラリーカフェで全国でも例を見ないコスプレ写真オンリー写真展「Layers」の1stを開催。予想以上の反響があった。 「すごい人数が来場してくれて、コスプレに興味ある人が多いんやなと思いました。熱い想いを持った同好の士は意外と多いことがわかりました」 しかし、この写真展の成功で、HEBUさんは満足して少しコスプレ写真から離れることになる。
作品性の高いコスプレ写真が受け入れられる大阪という地域性
廃墟の作品を撮り続けるうち、HEBUさんの中でひとつのイメージが膨らんできたという。それは「廃墟とコスプレを融合させた作品」だった。「1st Layers」を主宰したことによって、コスプレ写真家の知り合いが増えており、彼らから第2回の開催を要望する声が届くようになった。 「コスプレ写真を作品として残したいという同志に後押しされて、『2nd Layers』を開催しました。それ以降、今年の5thまで毎年開催し、1500人が来場する規模にまで大きくなりました。全国的に見ても、この規模のコスプレ写真展はほかにないでしょうね」(HEBUさん) こうした作品志向のコスプレ写真展が開催され、成功を収めているのは大阪という土地柄もあるかもしれない。HEBUさんによると「関西には、多くのバリエーションが撮れるハウススタジオが少ないんです。逆に、屋外では鶴見緑地などロケで自由に撮影できる場所が多い。そのため、コスプレイベントなど囲みの撮影会というよりは、写真家とコスプレイヤーがマンツーマンでじっくり撮影することが多いんです」。つまり、作品づくりのコンセンサスが取りやすく、作品にかけられる時間が多くなるということなのだ。 「自分もハコスタ(コスプレ専門スタジオHACOSTADIUM)などスタジオで撮ることもありますが、撮影に使える場所が限られているので、屋外のロケが多いですね。ただ、同じスタジオでも、そういう撮り方があったのか!、と思われたいので、そのための努力は怠りません」(HEBUさん)