骨太方針にリニア全線開業「最速2037年」明記 関西の財界・鉄道業界高評価、都市開発加速
11日に示された「骨太方針」原案には、リニア中央新幹線の全線開業時期として「最速令和19年」が明記された。関西では全線開業により、他の経済圏との交流が活発化し、リニアの乗り入れが想定される新大阪駅を軸とした鉄道網整備や都市開発が加速する期待が高いことから、地元財界や鉄道業界は原案を歓迎。大規模災害に備え、東京と大阪をつなぐ路線の強化も利点として挙げる。 「リニアの計画は確実に進んでいる。関係自治体と経済界が一体となり建設促進に努めたことが大きい」。関西財界の幹部はこう述べ、全線開業を待ち望んだ。 関西経済連合会は経済活性化などの観点から早期の全線開業を訴え、平成26年に大阪府市などと「全線同時開業推進協議会」を設立。機運醸成や国への要望などの活動を展開し、大阪延伸の最大8年前倒し決定につなげた経緯もあり、全線開業を〝悲願〟としている。 関西の鉄道業界も骨太原案を高く評価。大手私鉄関係者は「リニアは品川から名古屋止まりになる恐れもあった。大阪までの全線開業の見通しが立ち、その時期が示されたことには大きな意味がある」と話す。 鉄道業界の受け止めの背景には、関西のアクセス拠点として新大阪の重要性が高まっていることがある。令和13年に大阪都心を南北に走る新線「なにわ筋線」が開業し、新大阪―関西国際空港間のアクセスが向上する。同ルートはJR西日本と南海電気鉄道が一部を共用し、阪急電鉄も大阪-新大阪間の連絡線を計画。リニア全線開業は、鉄道各社が新大阪に接続する意義を高める。 新大阪周辺は4年に、規制緩和や税制面で優遇措置を受けられる政府の「都市再生緊急整備地域」に指定された。今年3月には地権者や大手不動産、ゼネコンが協議会を立ち上げており、リニア開業の目標が明確になることで、再開発の機運がさらに高まりそうだ。 国土強靭(きょうじん)化の観点から有用との見方もある。私鉄関係者は「リニアと東海道新幹線で、東京―大阪間の鉄道ルートを二重化できる。大災害に備えて、東京と大阪の2大都市をつなぐ路線を強化することは重要」とした。(黒川信雄、井上浩平)