浄土真宗本願寺派の総長選、3月辞任の池田氏が白票7割で異例の再登板…新領解文を巡る宗派の混乱は収束見えず
投票直前に退場も 紆余曲折の総長選
浄土真宗本願寺派(本山・西本願寺、京都市下京区)は20日の特別宗会で、実務トップの総長に元総長の池田行信(ぎょうしん)氏(71)を選んだ。2日間にわたる2度の総長選は 紆余(うよ)曲折の末、今年3月に総長を辞任した池田氏が再登板する異例の展開になった。「新しい『 領解文(りょうげもん)』(浄土真宗のみ教え)」を巡る宗派の混乱は収束が見えない。(西田大智)
全国の教区で異論相次ぐ
発端となった領解文は昨年1月、大谷光淳門主が、信仰上の要点を分かりやすい言葉で表現した現代版として発布。だが、間もなく宗派の教学最高位の勧学や司教の有志らが「誤解と混乱を招く文章がある。早急に取り下げるべきだ」と訴え、全国の教区でも異論が相次いだ。 今月、任期満了に伴う宗会議員(定数78)の総選挙が行われ、領解文の唱和推進に批判的な議員が多数当選した。
総長は、門主が指名した複数の候補者から議員が選ぶ。19日の宗会では、いずれも「唱和推進派」で、3月に混乱の中で辞任した池田氏、勧学の男性(66)の2人を指名。50人以上の議員が投票直前に退場し、議決に必要な人数を満たせなかった。中断を経て投票にこぎつけたが「当選しても辞退する」(宗会関係者)とみられていた勧学が61票(池田氏14票)を集めた。
再選挙となった20日は、池田氏と、領解文の制定時に総長だった石上智康氏(88)を指名。22票の池田氏が当選したが、白票は52票で、出席議員の7割を占めた。門主が推す候補者に投票できない議員の意思表示とみられる。
関係者「誰も得をしない」
元の領解文は室町時代に中興の祖・蓮如が創作したと伝わり、得度式などで唱えられる。ただ古語で書かれ、現代人には「平易さが希薄になった」とし、新しい領解文が制定された。 宗派は現在、「『伝える伝道』から『伝わる伝道』へ」の転換を掲げ、制定もその方針に沿うものだった。光淳門主は特別宗会で「伝わる伝道をはじめとした諸活動にお力添えいただきますことを切に願っております」とあいさつしていた。
閉会後、現状に「教区の声が宗会に届かない」と嘆く議員や、「このままでは誰も得をしない」と危機感を募らせる関係者もいた。 池田氏は当選後「(SNSなどで)新しい領解文を巡って様々な誤情報が飛び交い、事態の沈静化を難しくしている。それぞれの守備範囲、役割分担を踏まえて、着地点を見いだす必要がある」と述べた。