「いくら”橋本環奈”でもギャル話についていけない」…朝ドラ"成功要素"は『おむすび』を救えるか!
今やNHKの顔
NHK連続テレビ小説の第111作目、『おむすび』の放送が始まった。 主演は橋本環奈(25)だ。彼女はドラマの舞台となる地元福岡県の“ご当地アイドル”だった。 【変装してても...】かわいい!愛犬と街ブラデートを楽しむ橋本環奈の貴重な姿 ’13年、彼女が中学3年生の時に地元のイベントで踊っている写真がインターネット掲示板『2ちゃんねる』や『Twitter』などで急速に拡散。その結果、“可愛すぎるローカルアイドル”、“千年に一人の逸材”などと称され、注目を浴びることになる。NHKのニュース番組やワイドショーなどでも取り上げられるようになり、それからの彼女はまさに破竹の勢いで芸能界を席巻していく。25歳にして映画、ドラマ、舞台、CMの出演は数知れず。バラエティのレギュラーも抱え、ついには’22年、’23年と2年連続でNHK『紅白歌合戦』の司会に抜擢された。今やNHKの顔である。 そんな橋本が主演なわけだから、ドラマに対する期待度は爆上がりしていた。だが、第1回の放送を見て「おやおや」と思った視聴者は多かったようだ。放送終了直後に、ネットでは早くも「#反省会」が立ち上がってしまったのだ。 Xのコメントには 《ちむどんどんの再来》《ちむどんどんの悪夢が》などと、「#反省会」で異常な盛り上がりを見せた『ちむどんどん』(’22年度前期)の再来を心配する声も出ている。 朝ドラには「必要なコンセプト」があり、その要素を満たせば成功の可能性が高まるといわれている。 その1つ目は、女性の“立身出世”物語だ。朝ドラの多くは主人公が女性。コンセプトは苦難を乗り越えて、やがて一角の人物に成長する。そして、主人公のモデルは実在し、歴史に名を刻んだ女性。いわゆる、朝ドラの“王道”と言われている設定だ。 ◆程よい涙 だが、朝ドラすべてがそうだというわけではない。女性の立身出世物語というコンセプトは変わらないが、主人公が偉人じゃないこともあるし、今回のようにオリジナル脚本の“現代劇”が作られることもある。 ただ、“現代劇”で高評価な作品はなぜか少ない。過去にいくつも作られているが、当時はインターネットも普及しておらず、良くも悪くもドラマに対する評価、感想が拡散されることはなかった。ところが’10年代に入って放送された『てっぱん』、『純と愛』、『まれ』、『半分、青い。』、『おかえりモネ』、『ちむどんどん』、『舞いあがれ!』などの“オリジナル現代劇”には、いずれも厳しい声が飛んだ。 2つ目は、“程よい涙”だそうだ。 「明治、大正、昭和という激動の時代に生きた主人公が、時代と戦いながら成長していく姿に視聴者は感動を覚え、涙します。また太平洋戦争は日本国民にとって最も悲惨な出来事で、あの時代を乗り越えた人たちに畏敬の念を抱くわけです。 平成、令和でも“大震災”という悲劇があり、『半分、青い。』『おかえりモネ』でも描かれてはいますが、リアルに体験している視聴者も多く、観ていて涙するというよりは緊張してしまう感じがする。『まだ観たくない』という気持ちもあると思います」(放送作家) だが朝ドラはホームドラマでもあるので、必ずしも“波乱万丈”、“苦難克服”が必須条件ではないという。そこで、大事になるのが3つ目の要素。“伝える側と受け取る側のズレをなくすこと”だ。 「朝の通勤、通学時間に見るドラマなので、悲しいシーンが多すぎても敬遠されてしまいます。ホームドラマとして適度な悲喜が必要になりますが、要は視聴者が納得してどれだけ共感できるかにかかっています。つまりドラマのストーリーと視聴者の感情のズレをなくすことが大事なのです。それで言うと、『おむすび』はそこが難点であって、脚本に疑問符が付くシーンが目立つのです」(民放ドラマプロデューサー) 例えば、こんなシーン。橋本演じる主人公・米田結は、農家である家の手伝いをしなければならないため、部活を拒否していた。しかし彼女の家は貧しくなく、人手も十分に足りている様子だ。手伝いをする必要があるのか疑問が湧くが、結局、「先輩がかっこいいから」という理由で書道部に入り、土日は“ギャル”活動をすることになる。 ◆なぜギャルを絡めたのか? 正直、視聴者は頭がついていかない。なぜなら、ストーリーに「なぜギャルを絡めたのか?」が見えてこないからだ。多くの世代に視聴される朝ドラだけに、ギャル文化を知らない視聴者は多い。そのため、「どういうこと?」というシーンがあまりに多すぎるのだ。 「『ちむどんどん』もそうでしたが、地方性を出しながら、地元ならではの“ウケ”を狙いにいっているような気がします。ですが、ギャルの情報も、ボケも中途半端なんですね。コメディにしたいなら、福岡県のギャルをちゃんと調べて、地元の人たちが納得できるようなキャラクターで徹底して笑いを取る脚本にしないと。そうじゃないから現実味に欠けるシーンが出てくるとツッコまれちゃうわけです」(前出・プロデューサー) 4つ目の法則は、 「放送時間の中で5分に1回、つまり1話15分で3回、山場を作る』というものです。最後の山は、次回放送に対する期待を最大限にする役割があります」(前出・ライター) これら5つの法則を並べてみると、『おむすび』も朝ドラのコンセプトから大きく外れているわけではない。だがいかんせん、この5分に1回の“山”も決して高いとは言えない。 ◆脚本をどんどん書き直す可能性 では、『おむすび』は今後どうすれば汚名返上できるのか。 NHKのホームページを見ると、『おむすび』の紹介ページには、こう書かれている。 《平成・令和の荒波を、たくましく突き進むヒロイン──。彼女は、自分らしくポジティブに生き、周りにどう思われるかではなく、自分を思いっきり楽しんでゆく! そう、彼女は“ギャル”である。》 不安材料の多い『おむすび』だが、ドラマは始まったばかり。朝ドラは状況に合わせて脚本をどんどん書き直していくことはよく知られている。この先、それが功を奏し、うまくハマれば好評を博する可能性がないわけではない。 ただ#反省会が立ち上がり、ネットが盛り上がるのも、それだけ注目されているということだ。それはそれで朝ドラの1つの楽しみ方ではないだろうか──。
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