「空き家のコスト」徹底解剖、固定資産税は最大で6倍に膨れ上がるおそれも
少子高齢化の進展とともに深刻化している「空き家」の増加。関連トラブルの増加などもあり、放置への対策が喫緊の課題となっている。『週刊東洋経済』10月26日号の第1特集は「実家の終活」だ。空き家をめぐって進行している問題や活況を呈し始めた関連ビジネス、実家をめぐる諸問題の解決策を紹介している。 【図で見る】空き家にかかってくる経済的負担 空き家の倒壊によって隣家が全壊し、住んでいた親子3人が亡くなったことで、2億0860万円の損害額が発生──。
これは公益財団法人の日本住宅総合センターが、空き家をめぐる損害賠償リスクについて試算したものだ。 空き家を放置したことで想定される最悪のケースではあるが、空き家の外壁落下による死亡事故(被害者が小学生)というケースでも、試算損害額は5630万円とかなり高額だ。 見る人によっては、危機感をいたずらにあおるような試算に映るかもしれない。だが、地震や台風といった自然災害が激甚化する中、空き家を放置することによって痛ましい事故が生じる可能性は、決して低いとはいえない。
■「管理不全空き家」を新設 まさにそれが、国や自治体が空き家を解消しようと躍起になっている理由の1つでもある。 国は昨年6月、空き家対策の特別措置法を改正し、問題のある空き家の対象を広げた。「管理不全空き家」という区分を新設したのだ。これにより、以前からある「特定空き家」(=周囲に著しい悪影響を及ぼす空き家)の一歩手前の状態でも自治体が指導できるようになった。屋根材が一部破損していたり、庭木が腐朽していたりといった、管理が行き届いていない状態が認定の基準だ。
自治体から管理不全空き家の指導を受けたにもかかわらず改善されない場合は「勧告」処分となる。その場合、税負担を軽減できる特例措置が解除されてしまう。 特例措置とは、固定資産税などの課税対象額を減額するというもの。解除されると、固定資産税では負担が最大で6倍に跳ね上がる。実際には激変緩和措置があるため、一気に6倍になることはないが、それでも税負担が3倍超に拡大するというケースが大半だ。 ■早期の処分がカギ