『花束みたいな恋をした』にも登場した『宝石の国』完結へ アニメ第2期に高まる期待
アニメスタジオ・オレンジの功績
それだけではない。日常のどこかドタバタとしたシーンはコミカルに、月人との戦闘シーンはスピーディーでスタイリッシュに描いて楽しませてくれた。驚きだったのは、それらが3DCGによって制作されていたことだ。2Dによる作画と見間違えるようなルックを持ちながらも、宝石が下となったキャラクターたちに相応しいキラキラとした色彩と、複雑な形状をしっかりと描画して、その時点での3DCGアニメの到達点を感じさせてくれた。 制作したオレンジは、後に板垣巴留の漫画を原作にした『BEASTARS』で動物がベースとなったキャラクターたちを表情豊かに描き、内藤泰弘の漫画が原作の『TRIGUN STAMPEDE』で原作の漫画とも、2D作画のアニメシリーズとも違った独特の雰囲気を持った『トライガン』の世界を見せてくれた。そんなオレンジの実力が、最適の作品を得て存分に発揮された作品が『宝石の国』だった。 朴璐美が声を当てたパパラチアという超絶イケメンキャラが232年ぶりに目を覚まし、悩むフォスフォフィライトに助言を与えてすぐに眠りについてしまうエピソードを経て、特に変化がなさそうな日常の中で、何かが動きだそうとしていると予感させる第12話「新しい仕事」をもって、アニメ『宝石の国』はいったん終わる。その先の展開を原作の漫画で読んでいない人には、ラストシーンで金剛と対峙するフォスフォフィライトがその後に何をするのか、そして物語の世界に何が起こるのかといったワクワク感を今も抱き続けているだろう。
『宝石の国』の展開は驚天動地の連続だった
一方で、原作を読んできた人にとって、フォスフォフィライトや物語世界のその後は、驚天動地の連続だった。アニメで続きを観たい人のために詳細は明かさないが、ただただ不気味な存在の月人たちの正体や、宝石たちが慕い頼る金剛の秘密が判明して、地上に暮らす人類の末裔のような宝石たちと、月からやってくる侵略者のような月人との戦いといった物語の構図が大きく変わる。それこそひっくり返って裏返ると言ってもいいくらいの展開だ。 その中で、フォスフォフィライトの立場も変わっていく。同時に、その姿もどんどんと変貌を遂げていく。アニメの最後の時でさえ両腕が砕かれ合金に置き換えられている。原作ではさらに変貌が重なって、単行本の12巻では知らずに見せられても誰だか分からない姿になってしまっている。そんなフォスフォフィライトが宝石たちにも月人たちにも先生にも意味のあることを成し遂げた先に、さらに幾つかの展開を経て最終話のエピソードへと至る。 美しい少年たちによるバトルストーリーとして幕を開けた作品が、まさかそのような帰結を迎えるとは誰が予想しただろう。キャラクターに入れ込んで読むタイプの人には、どこか受け入れがたい展開だったかもしれない。ただ、フォスフォフィライトが当初から取り組んできた、現在を保存し未来の不意に備える歴史の編纂者としての役割が果たされた最後だとも言える。その意味で、『宝石の国』には貫き通された芯があった。