小林製薬「紅麹問題」結局、何がマズかったのか? 「添加物の神様」と言われた食品製造のプロが「3つの事故原因の可能性」と「根本原因」を解説
とくに日本酒の種麹は細心の神経を使って育てる必要があり、その大変さは味噌、醤油の比ではありません。 食品添加物の「ベニコウジ色素」を抽出する麹の管理については、安全審査を通さなければいけないから、なおのこと「徹底した厳しい管理」が必要となります。 翻って「紅麹コレステヘルプ」は、どのような管理がなされていたのでしょうか? ここからは私の推測になってしまいますが、大量生産・効率化を優先するあまり、麹を育てる品質管理が不十分だったのではないかと思うのです。
「麹の培養期間が50日」と長いのも、私に言わせれば不安要素です。長ければ長い分、変質の危険性が高まるからです。 もちろん、管理はしていたのでしょう。しかし、「麹の品質管理の厳しさ」を知り、危機意識をもって対応していたのでしょうか。 そこが疑問です。 ■人間は、自分が思うほど自然をコントロールできない 私たちは歴史の中で「発酵食品」の利点を見つけ、上手に食文化に取り入れてきました。 発酵食品は微生物のカビ(麹菌)、酵母、細菌の働きをうまく利用して作られ、それらが複雑に絡むことによって独特の風味が醸し出されるわけです。
しかし、人間がその存在を解明し、培養できる微生物は、全体の1%にも満たないといわれています。 つまり、「人間は、自分が思うほど自然をコントロールできていない」のです。 人間の英知がまだまだ及ばない世界であることを自覚し、今ある最新技術を駆使してゲノムレベルで管理していくことが、微生物(麹菌)の管理には不可欠なのだと思っています。 そこを踏み誤って「過信」「慢心」が起きたときから、間違いが生じます。
今回の事故の根本には、それがあるように私には思えてなりません。 次回は「サプリメントの安全性」について、長年食品加工に関わってきた私の立場から述べてみたいと思います。 *このシリーズの1回目➡「紅麹問題」は“3つの基本、混同してる”人が多すぎだ
安部 司 :『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事