中国の「過剰生産と輸出攻勢」に東南アジアも警戒 インドネシア前大統領が自国産業の保護を明言
中国の過剰生産と輸出攻勢を懸念する発言が、東南アジアの指導者から飛び出した。 「中国の過剰生産問題は(国際社会の)幅広い注目を集めている。多くの国々が安価な中国製品の大量流入の影響を避けるため、自国の国内市場を保護する措置を講じている。インドネシアは世界第4位の人口大国として、国内市場を守る能力を身につけるとともに、わが国が優位性を持つ製品の輸出を積極的に拡大しなければならない」 【写真】2024年10月、中国の李強首相と北京で会談するジョコ氏 インドネシアのジョコ・ウィドド大統領(当時)は10月9日、退任まで2週間を切ったタイミングで第39回インドネシア貿易博覧会の開幕式に登壇し、そのように述べた。
(訳注:インドネシアでは2024年2月に大統領選挙が行われ、ジョコ氏の路線継承を掲げたプラボウォ・スビアント氏が当選。10月20日に新大統領に就任した) ■中国製品の大量流入を憂慮 「世界経済はいまだ完全には回復しておらず、インフレが依然として多くの国々を悩ませている。さらに、軍事衝突や貿易摩擦が(世界各地で)続いていることが、多くの国々を保護貿易的な政策に走らせ、世界貿易の停滞を招いている」 ジョコ大統領はそんな見方を示したうえで、批判の矛先を中国に向けた。
「中国の過剰生産は先進国、とりわけアメリカおよびEU(欧州連合)との間の貿易摩擦をエスカレートさせている。中でもハイテクや再生可能エネルギーなどの分野で、安価な中国製品が自国産業の足腰を弱らせることを多くの国々が憂慮している」 インドネシアの有力メディア「Tempo(テンポ)」の報道によれば、インドネシア政府は中国の過剰生産が自国の繊維産業に与える影響を特に懸念している。 繊維産業はインドネシア経済を支える基幹産業のひとつだ。しかし低価格の輸入繊維製品の大量流入により、地場企業は工場閉鎖や人員削減、輸出減少などの苦況に直面している。
そんな中、インドネシア政府は2024年6月、輸入繊維製品に対して追加関税と反ダンピング関税の適用を決め、国内産業の保護に乗り出した。 ■中国系ECの拡大を牽制 インドネシアではEC(電子商取引)の分野でも、中国企業の事業拡大を牽制する動きが出ている。インドネシア政府は2023年9月、SNS(交流サイト)上でのEC事業の展開を禁じる新規制を導入。その結果、中国発のショート動画アプリ「TikTok(ティックトック)」はインドネシア向けEC事業の一時中断を余儀なくされた。