特殊詐欺「バイトで加担」4割 県警、今年摘発の容疑者
●10~30代、県外在住の11人 「受け子」から強盗実行犯へエスカレートの事例 アルバイト感覚で犯罪に加担する若者が増えている現状が浮き彫りとなった。石川県警が今年1~11月に特殊詐欺事件で摘発した容疑者29人のうち、約4割の11人が交流サイト(SNS)上の情報に応募した「闇バイト」とみられることが、取材で判明。11人は10~30代でいずれも県外在住だった。そうしたバイトが首都圏で相次ぐ強盗など悪質な事件の実行役となるケースがあり、県警は高額報酬をうたって各地から人を集める手法の広がりに警戒を強めている。 「闇バイト」としてSNSで実行役を募り、詐欺や強盗などを繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ」(通称トクリュウ)の犯罪が全国で続発していることを受け、石川県内で発生した特殊詐欺事件を対象に、容疑者が犯行に関わった経緯を県警が初めてまとめた。 それによると、バイトとされる11人のうち、20代が5人と最も多く、30代4人、10代2人だった。いずれも「受け子」と呼ばれ、被害者から金などを受け取る組織末端の役割を担っていたとみられる。 このほか、知人を介して詐欺事件に関わった容疑者が11人おり、先に組織に加わったバイトに誘われたとみられる。特殊詐欺の受け子や出し子などでいったん犯罪に関わったことをきっかけに、徐々にその内容がエスカレートし、強盗の実行犯として組み込まれるまでになった事例があるという。 「ルフィ」などと名乗る人物が指示したとされる一連の広域強盗事件のうち、2023年1月に住人が亡くなった東京都狛江市の事件では、実行犯4人のうち2人が石川県関係者だった。当時19歳だった白山市出身の男は一審で懲役23年、当時金沢市在住の男には無期懲役の判決が言い渡された。いずれも控訴している。 県警は21年10月から、SNS上で横行する闇バイトの募集投稿に警告を出す取り組みを進めており、24年11月末までに98件に発出。若者向けにはオリジナルの啓発漫画を作成し、公式X(旧ツイッター)で公開するなどしている。 ●恐怖が抑止力に 犯罪の「入り口」立たせず 暴力団追放県民大会 高校生らに訴え 若者を闇バイトの勧誘から守るためにはどうすればいいのか―。少年の非行防止や、立ち直り支援に長年従事してきた元福岡県警職員で、スクールカウンセラーの安永智美さんは「闇バイトの恐ろしさを伝える予防教育が大事。恐怖が抑止力となる」と強調、犯罪の「入り口」に立たせない取り組みが重要だと指摘する。 11日、県警が金沢市の県地場産業振興センターで開いた暴力団追放県民大会で講演した安永さんは、闇バイトを無期懲役や死刑になる可能性がある「凶悪犯罪だ」と表現。「簡単にお金もうけはできない。もし巻き込まれてしまったら、一刻も早く勇気を出して警察に助けを求めてほしい」と呼び掛けた。 大会は若者を闇バイトなどの反社会的勢力に関わらせないことを初めてテーマに設定。参加した金沢西高1年生約350人が、加害者にも被害者にもならない取り組みを考えた。 大嶌正洋県警本部長はあいさつで、犯罪グループは入手した個人情報を基に闇バイトに応募した青少年を脅迫するとし、「ためらうことなく警察に相談を。必ず保護する」と訴えた。