詐欺被害の多発を受けて高齢者宅を訪問する多治見署員ら＝瑞浪市

◆多治見署管内　固定電話対策に本腰 　岐阜県警多治見署の管内（多治見、土岐、瑞浪市）で今年、県内の署でワーストワンの勢いで詐欺被害が発生している。県警の担当者は「大都市圏から『受け子』らがアクセスしやすい土地柄も影響しているのでは」と分析。地域の事情に明るい企業などと協力しながら、特殊詐欺の電話がかかってきやすい固定電話の対策などに本腰を入れている。 　「使わないし、国際電話切っておくと安心やね」。18日、名古屋ヤクルト販売（名古屋市）と県警の連携協定に基づき、署員らが詐欺防止の広報活動で瑞浪市内の高齢女性宅を訪問した。犯罪に使用されるケースが多い国際電話を遮断するサービスを紹介したほか、インターホンに「特殊詐欺防犯指導済」と書かれたステッカーを貼った。 　県警によると、同署管内で今年8月までに発生した特殊詐欺被害は48件（前年同期比32件増）に上り、県内22署で最多。件数の増加率は22署の中で最も高い。被害額も1億1331万円（同9986万円増）に及び、前年とは桁違いの被害を出している。 ◆SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺、被害総額5億5041万円 　交流サイト（SNS）を使って恋愛感情を抱かせ投資に誘導する、などの手口が該当する「SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺」も非常に多く、同時期の発生件数は56件、被害額は5億5041万円だった。こちらも件数が22署で最多で、人口が多い岐阜市内を管轄する4署（岐阜中、岐阜北、岐阜南、岐阜羽島署）を足した46件さえ上回る事態となっている。 　多治見署管内で被害が多い理由は定かではないが「都市圏へのアクセスの良さが裏目に出ている」という見方がある。県警本部生活安全総務課の伊藤良輔特殊詐欺・高齢者安全対策係長は「高齢世帯が多い割に交通の便がよく、愛知県春日井市や名古屋市などの都市に近い。受け子は鉄道、レンタカー、タクシーなどでやってくるが、どれも使いやすい条件がそろっている」と話した。 　地域の人も詐欺の脅威を近くに感じている。広報事業で警察官と一緒に訪問した同社パート従業員の曽村薫さん（55）は、毎週200軒の家庭をたずねる「ヤクルトレディ」。「『当選おめでとうございます』と電話を受けたが無視した」「詐欺に遭い、家族が自己破産を余儀なくされた」といった話を毎日のように耳にしているという。 　こうした状況を受け、多治見署は関係機関と連携した広報活動を展開していく。小木曽智昭署長は「犯人からの電話の半数以上が、自宅の固定電話にかかってきている。迷惑電話防止の機能が付いた電話の利用が有効だ」と指摘。「地元に密着した企業や行政、各種ボランティア団体と連携し、特殊詐欺の具体的な手口を知ってもらえるように努める」と述べた。 （稲木悠司）