「妊娠の将来」はどうなる?【生殖医療専門医×出産ジャーナリストCROSSTALK 】
妊活と仕事の両立、卵子凍結、出産費用の保険適用など、これから結婚や妊娠を考える2人にとって気になる話題をクローズアップ! 今回のテーマは、「妊娠の将来」について。 不妊治療の最前線で活躍するドクター・市山卓彦先生と、妊娠・出産の現場を見つめ続けるジャーナリスト・河合 蘭さんに、妊活の“今”と“これから”について語り合っていただきました。 【画像】不妊治療、年齢によって変わるステップ
女性も男性も将来に不安を抱えている
――これからの妊活、妊娠・出産はどうなっていくでしょうか。 ■河合 蘭さん(以下、河合):私が講師として女子大で講義を行った際、授業のプレアンケートで「妊娠できるかどうかの不安がありますか?」と聞いたら、ほとんどの学生が「不安がある」と答えました。以前なら「結婚したら当然、赤ちゃんができるもの」と思われていたのが、今は「困難が伴うもの」というふうに若い人の意識が変わってきているんですね。これからは「私、妊娠できるかしら」という一抹の不安は、みんなが感じている不安になっていくと思います。 ■市山卓彦先生(以下、市山):そうですね。そして、将来に不安を抱えているのは女性だけではありません。うちのクリニックには「精子凍結したい」という男性患者さんもいらっしゃいます。でも、男性の精子が老化し始めるのは45~50歳頃から。だから30代で精子が超元気という人には「凍結しなくていいよ」とお話ししています。 ■河合:がんの治療などを除いては精子を凍結する理由はないと。 ■市山:はい。そして男性に適切に理解して欲しいのは、セックスレスの問題です。今、日本人カップル全体の約52%がセックスレスといわれていて(※)、妊活が遠のいてしまう理由の1つになっています。性交渉を持つことがあまり得意ではないカップルがタイミング法にトライするとなると、ただでさえ少なかった性交渉が日にちを指定されるわけですから、2人の仲がギクシャクする原因にも。そこで適切に人工授精を男性にもすすめてあげると、多くの人は「そんな手段があるのか」「妊活はつらくないんだ」と目の色を変えるんです。 ■河合:妊活は女性だけでなく男性だってつらいですものね。 ■市山:そうなんですよ。タイミングを強制されるのは苦痛でしょう。だから僕は男性が1人で来院したときは必ず人工授精の話をします。「あなたが妊活を頑張りたいなら、こういう手段を知っておいて欲しい。知ったうえで選ぶ・選ばないはあなたの自由なので」と。そして、精液検査は男性患者さんにライフステージごとの治療計画・家族計画を考えてもらうきっかけだとも思っているので、パートナーの年齢と妊孕性の話をして、次は一緒に来院することをすすめています。 ■河合:妊娠の未来ということでは、『ポッド・ジェネレーション』という映画が近未来の妊娠を描いています。AI(人工知能)の発達によって、自然の妊娠か、ポッドと呼ばれる卵型の人工子宮での妊娠かが選択できるようになる……という物語です。実は人工子宮って、もう何十年も前から試みが始まっているんですよね。ヤギの子宮から胎児を出して、人工子宮に入れて育てるという実験が日本でも海外でも行われていますが、なかなかうまくいかない。難しいものなんですね。 ■市山:人工子宮は、最終的に技術としてはできるようになるでしょう。ただ、やっていることは代理出産ですから、愛着形成を図れるかどうかがテーマになると思います。 ■河合:この映画ではまさしく、その愛着形成についても描かれているし、キャリアと妊娠、出産に関する男女の不平等など、さまざまな問題提起もされているんですよ。 ■市山:それは面白そうですね! 僕も観てみたいと思います。 ※ 一般社団法人日本家族計画協会家族計画研究センター「【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2020」 河合さんコメント 【Check!】AI時代は人工子宮で妊娠!? 近未来の妊娠を描いた映画が登場 2023年に公開された映画『ポッド・ジェネレーション』は、新時代の妊娠・出産と向き合うカップルを描いたSFラブコメディ。出産までの10カ月間、人工子宮「ポッド」で赤ちゃんを育てる─そんな未来がやってくる…かも!? ■【STORY】AI(人工知能)が発達した近未来では、自然妊娠か、持ち運び可能な卵型の「ポッド」での妊娠か、どちらかを選べるように。ハイテク企業に勤めるレイチェルと植物学者・アルヴィーのカップルはポッド妊娠を選択するが…。 ●2024年4月26日(金)DVDレンタル/セル・配信開始 発売・販売/アメイジングD.C. 提供/AMGエンタテインメント、パルコ