ロシアと合同軍事演習をおこなうインドネシア新大統領の「野心」─多極化する世界の「極」になれるか
11月4日間から5日間にわたり、インドネシアとロシアの合同軍事演習がおこなわれている。 【画像】西側とも積極的に外交をおこなうプラボウォ これは元国防相であったプラボウォ・スビアント新大統領が就任してわずか2週間ほどしか経過していない時点での象徴的な出来事だ。 英紙「フィナンシャル・タイムズ」によると、インドネシアはこれまでもASEANの一員としてロシアと合同演習をおこなったことはあったが、二国のみでおこなうのは初となる。
ロシアや中国と関係強化
最近のプラボウォは、ロシアや中国に明確に接近する姿勢を立て続けに見せている。 就任前の7月にはロシアを訪問し、ウラジーミル・プーチン大統領と会談。インドネシアとロシアの二国間関係を深め、防衛分野での協力を拡大したいとして、ロシアをインドネシアの防衛博覧会にも招待した。 会談の際には「我々はロシアをすばらしい友人とみなしており、この関係を維持して強化し続けたい」と述べている。 また、8月にプラボウォは、領海紛争などにより9年間中断されていた中国との合同軍事演習を再開することに合意した。 さらに、10月にロシアでおこなわれたBRICSサミットでは、BRICSに加盟する意向を示した。 そのため、欧米寄りだった前政権の路線を変更して、ロシアや中国を中心とする反西側陣営に接近していくのではないかとも言われている。
プラボウォが望んでいること
しかし、プラボウォは決して反欧米の路線を強めようとしているわけではないと専門家は指摘する。むしろプラボウォの狙いはインドネシアを、欧米とも中露とも渡り合える存在感のある中堅国にすることのようだ。 オーストラリア戦略政策研究所の上級アナリスト、フィトリアニ・ビンタン・ティムールは香港メディア「アジア・タイムズ」に対して、「プラボウォは、インドをクアッドの一員と位置づけながらプーチンとも会談したインドのナレンドラ・モディ首相のやり方を真似したいのだろう」と述べる。 アジア太平洋諸国の国防担当閣僚や軍幹部が参加するIISSアジア安全保障サミットの2023年の会合でプラボウォは突如としてウクライナにおける和平案を提案したこともある。このことからも、特定のブロックに属さず、独立して世界の舞台で影響力を持ちたいプラボウォの野心がうかがえるとティムールは指摘する。 世界第4位の人口を誇り、まだまだ経済発展の余地があるとされているインドネシア。折しも米国では自国第一主義を掲げるドナルド・トランプが次期大統領となり、欧州の結束力も弱まっている。そのようななかでプラボウォは、多極化が加速する世界の一つの「極」としてのインドネシアの立場を確立したいと考えているようだ。
COURRiER Japon