春闘好調で物価目標実現に手応え、急速な利上げは不要-日銀意見
(ブルームバーグ): 日本銀行が17年ぶりの利上げを決めた18、19日の金融政策決定会合では、好調な春闘を背景に2%の物価安定目標実現への手応えを示す声が出る一方、利上げを円滑に進めるべく、市場などへの配慮を重視する意見も目立った。
物価の先行きに関し、昨年を上回る高水準が見込まれる今年の賃上げ状況を踏まえ「2%程度で推移しながら、賃金に支えられる望ましい形に次第に移行していくことが展望できる」「物価安定の目標の実現の見通しがある程度立ったと考えられ、目標の達成に向けて大きく前進している」など前向きな声が相次いだ。物価目標の持続的・安定的実現が「見通せる状況に至ったと判断できる」として利上げが決まった。
一方、利上げの際のコミュニケーションの重要性を指摘する声も出た。ある政策委員は「マイナス金利を解除する場合でも、急速な利上げが必要な状況ではないため、慎重な姿勢を強調することが必要だ」と主張。金融引き締めへのレジーム転換ではなく、「あくまで物価安定の目標の実現に向けた取り組みの一環である点を、各種コミュニケーションによって明確に伝えていくことが重要だ」との意見もあった。
会合では世界最後のマイナス金利を解除し、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の廃止や上場投資信託(ETF)の新規購入の停止も決めた。市場の関心は今後の利上げペースなどに移っているが、今回の主な意見では今後の政策運営のヒントとなるものは多くは見られず、「経済・物価・金融情勢に応じて金融政策を運営していく」方針が改めて示された形だ。
これまでの情報発信によって、マイナス金利解除後も当面は緩和的な金融環境が維持されるという理解が市場に浸透しているとし、「今回の措置によって金融市場で大きな変動が起こる可能性は低い」とある委員は指摘。異次元緩和から普通の金融緩和への移行は「短期的なショックを起こさずに十分可能だ」との認識も示された。