経済を低迷させる長雨 天候よりも消費に影響を与える大きな要因とは?
最近の「長雨」が経済にどういった悪影響を与えるのか、そうした懸念をよく見聞きします。もちろん、景気は天候だけで決まるものではありませんが、やはり、夏は暑い方が景気にはプラスです。 暑ければ、エアコン、扇風機、ビール、アイスクリーム、それからプール・海水浴などのレジャー需要が盛り上がりますから、景気には好影響がおよびます。しかしながら、今年の夏は雨が多くて気温もさほど上がりませんでしたから、これらの消費は苦戦を強いられたとみられ、夏場の景気に悪影響を与えたと判断されます。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
経済に影響を与える天候要因は一時的、それよりも注目したいのは?
ここで思い出すべきは、わずか1カ月半ほど前まで「水不足」が問題になっていたことです。春先から夏の入り口にかけては、晴れの日が続いて雨がほとんど降らない状態が続いていました。そのため、この晴天続きが国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費を押し上げる要因になり、実際、4-6月期の経済成長率は年率+4.0%という高成長を記録しました。
ここまでを整理すると、春先から夏の入り口にかけては天候要因が景気にプラスだった反面、8月は天候要因が景気にマイナスという状況です。ニュースなどではどうしても悪天候が取り上げられることが多いため、その影響が誇張されてしまうのですが、天候要因はプラスもあれば、マイナスもあるということを認識しておくべきでしょう。 ただし悪天候の厄介なところは、その影響が長期化する可能性があることです。懸念されるのは、目下の長雨が、野菜の生育に影響を与え、野菜価格の上昇が続く可能性があることです。野菜のように購入頻度が高いものは、消費者が肌で感じる物価を引き上げる効果があり、それは節約意識を強めることにつながります。そうなれば、消費を下押しし続ける可能性は残ります。昨年も野菜価格の高騰が一因となって消費が減速する場面がありました。 もっとも、消費にとって一番重要なのは雇用・所得環境です。天候要因は短期的に消費を変動させることはあっても、それが基調的な変動につながることはありません。幸いなことに失業率の低下傾向は続き、賃金も緩やかながら上昇を続けていますので、悪天候など一時的要因が過ぎ去った後は、その反動を伴いつつ、消費が再び活発化するはずです。