唾を吐きかけられることも…タクシー運転手のカスハラ問題、ライドシェア解禁、オーバーツーリズムの影響を運転手に聞いた【8月5日はタクシーの日】
日本では1912年(大正元年)の8月5日に初めて誕生したとされるタクシー(営業開始日については諸説あり)。当時はT型フォード6台での営業だったとか。112年後の現在では多くのタクシーが走っているが、カスハラやライドシェア、オーバーツーリズムなどタクシーを巡る環境も大きく変わっている。8月5日タクシーの日に若手ドライバーに話を聞いた。 4年制大学から新卒採用で大和自動車交通に入社した若手社員
顧客による理不尽なクレームや暴力などの迷惑行為をさす、カスタマーハラスメント、通称「カスハラ」。2023年には国が定義を明確化、企業に対策を義務付ける法制化に動き出し、東京都も防止条例法案を今年9月の都議会に提出することを表明した。 だが「カスハラを受けない日はない」と被害を訴えるタクシードライバーもいるほど、タクシーという密室空間ではカスハラが横行しているという。 また、限定的ではあるものの遂に解禁となったライドシェアによる影響はあるのだろうか? 8月5日タクシーの日に、新卒で大和自動車交通に入社した2人の若者に話を聞いた。
唾を吐きかけられたことがある
――これまで怖い思いをしたことはありますか? 早乙女陽美さん(以下早乙女) あります。車線を変えようとウィンカーを出して、ミラーで後方を確認して、充分な車間距離を保って車線を変えたんですけど、その瞬間後ろの車がものすごいスピードで突っ込んできて――。 ――怖いですね。 早乙女 後ろの車が急ブレーキを踏んだので事故は回避できたんですが、後方にピタッとついたまま、何度もクラクションを鳴らされて。お客様を乗せていたので、内心ドキドキしながら車を走らせました。 前田永遠さん(以下前田) お客様をお乗せしているときは判断が難しいんですよね。ひとりのときはすぐに警察に通報するんですが。 早乙女 お客様に、「こういう状況なんですが、どうしましょう?」とお聞きしたら、お客様が、「車のナンバーを控えたから大丈夫ですよ。警察に通報しますか?」とおっしゃってくださって。その一言で気持ち楽になりました。 前田 基本的には、優しくていいお客さんばかりですよね。 ――前田さんも怖い思いをしたことがありますか? 前田 お客さんを降ろすために車を停めたら、後ろのドライバーさんから怒られたことはあります。運転席の隣まできて窓ガラスを叩くので視線を合わせないようにしていたんですが、窓を下ろしたとき、“どんな人だろう?”と思って、ちらっと相手の顔を見たことがその人の怒りに火をつけてしまったみたいです。 周りにも人がいたので、“その場で暴力を振るわれることはないだろう”と冷静に思いながら、「すみませんでした」と謝ったら、それで相手が引いてくれました。 ――ハラスメントを超えた暴力行為です。 早乙女 私も酔ったお客さんが、車の中で寝入ってしまって。警察の方を呼んで起こして頂いたところまではよかったんですが、起きるなり「金は払ったからな」と大きな声で叫び出して…。 “よくそんなことが言えるな”と呆れてしまったのですが、その態度が気に入らなかったようで、唾を吐きかけられたことがあります。
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