玉木宏、『のだめ』から10年 新しい自分で、千秋先輩のイメージ塗り替えたい
『のだめ』で気づいたこと
玉木の言葉通り、『ウォーターボーイズ』以降、ドラマや映画に、コンスタントに出演するようになり、人気俳優としての地位を確立したように感じられた。「俳優を続けていく」という目的は、ある程度達成感はあったというが、同時に「作品に出ることが生き残るすべではない。出ているだけでは飽きられてしまう」という思いが強くなっていったという。「徐々にそういう危機感は募っていったのですが、大きく感じるようになったのは、2006年に放送された『のだめカンタービレ』ですね。ドラマに続いて映画化もされ、結果的には4年ぐらい携わったのですが、いまだに『のだめ』の千秋先輩というイメージが強いんです」と苦笑いを浮かべる玉木。 続けて「『千秋先輩だ』といわれるのは、嬉しい半面『もういいのではないかな』と思う部分もあるんです。ありがたいことなのですが、逆にいえば、10年以上経つのに、まだ自分は、あのときを超えられていないのかと思ってしまうんですよね。また次に新しいものが生まれれば、イメージは塗り替えられるという思いがあります。『のだめ』だけではなく、常に観ている方の期待を裏切るような俳優でいることが目標です」と語る。
新たな玉木が観られる作品
その意味では、『悪と仮面のルール』で玉木が演じた主人公・久喜文宏は、“邪”の宿命に葛藤しながら凄惨さと純粋さの両面を持つ非常にセンシティブな役柄で、新たな玉木が垣間見られる。玉木自身も「特殊な映画で、勝負したいと思えるような作品なので、多くの人に観ていただきたいと思います」と気合十分だ。 さらに、人の心に潜む闇と葛藤が連鎖するドラマに「僕たちがやっている仕事は教科書ではないので、倫理が問われる現在の世の中でも、悪は悪として映せばいいと思っているんです」と語った玉木。こうしたノワール的な側面を持ちつつも、新木優子演じる香織とのピュアなラブストーリーの一面も持つ。 「この作品が公開され、どのような評価を受けるのか、とても楽しみです」と笑顔を見せると「これからもチャレンジする気持ちを忘れずに、常に意外性を発信できるような俳優でいたいです」と抱負を語ってくれた。 (取材・文・写真:磯部正和)