ミケーレはミケーレのまま 洋服が祖業の「ヴァレンティノ」のスタイルに着想し、装飾主義全開
ミケーレ・イズ・バック! バイバイ・クワイエット・ラグジュアリー! 【画像】ミケーレはミケーレのまま 洋服が祖業の「ヴァレンティノ」のスタイルに着想し、装飾主義全開
新クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)による「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の2025年春夏コレクションは、「ヴァレンティノ」というメゾン自体の一つの時代の終了と新たな時代の始まりを印象付けるにとどまらず、ここ数年ファッション業界を席巻していたクワイエット・ラグジュアリーの流れの(少なくともラグジュアリーやデザイナーズの世界における)終了を決定づけた。ミラノからパリを通して、一捻りした定番をコーディネイトの妙で新鮮に見せるクワイエット・ラグジュアリー一辺倒なムードは収束に向かっている印象だったが、トレンドやムードは再び変わりそうな気配だ。
新しい「ヴァレンティノ」の1ページは、賛否両論あるだろうが、まさに我々が「グッチ(GUCCI)」で見たアレッサンドロ・ミケーレそのものだった。デニムなどのカジュアルアイテムは数点出てくるものの、イヴニングドレスとジャケットを骨子に据え、その全ての余白に上書きをするような感覚で鮮やかな色とさまざまな柄、そして豪華な装飾を施し、ターバンやノーズリング、リップアクセサリーなどを加える。大きな特徴は、小さな蝶ネクタイでタイドアップしたシャツ&ジレからノーカラーのジャケット、そしてスタンドカラーの水玉模様のパフスリーブブラウスなどの首元にあしらった波打つペプラムのつけ襟や、ボタンの代わりにジャケットに加えたリボン、そしてレースのカラータイツなど。フリルとラッフル、そしてペプラム、レースにチュール、そしてオーガンジー、タッセルにリボン、そして蝶ネクタイ、肩にかけたフェイクファーのストールやフリンジのバッグ、そしてメリージェーンのパンプス。ロココ調やバロック調など、いにしえのスタイルに着想を得たムードも健在だ。ダマスク織の素材に代表される中東のムードや、ターバンが表現するインドなどの南アジア、そしてシノワズリな東アジアのムードも交え、和洋折衷なのも彼らしい。男女においてスタイルの境界線が存在しない多様性やジェンダー感も、「グッチ」時代と同じだ。