いじめ最多3100件 昨年度、富山県内児童生徒
●前年の1.5倍超、不登校も最多3255人 富山県内の小中高と特別支援学校で、2023年度に認知したいじめの件数は3100件で、22年度の1963件の1・57倍に増加し、現在の統計方法となった06年度以降で最多となった。不登校の3255人も最多で、前年度の2675人から580人増えた。県教委によると、いじめの件数の増加は学校側に、小さなトラブルの段階で発見するよう指導を強化した結果が反映されたとしている。 県教委と県が31日、文部科学省の調査結果の県分を公表した。 いじめの認知件数は、小学校が2168件(前年度1107件)、中学校が764件(同693件)、高校が133件(同131件)、特別支援学校が35件(同32件)。総数は15年度から増加が続いており、小学校と中学校は過去最多だった。身体的被害や長期欠席などが生じた「重大事態」は19件あった。 ●「早期発見」で増加か 小学校が約2倍に増えたことについて、県教委の富川展行児童生徒支援担当課長は、昨年5月の新型コロナ5類移行によって、子ども同士の接触が増えてトラブルが起きていると指摘。さらに教員に対し、子どもの様子に気を配り、早期発見に努めるよう指導してきたため、件数が増えたとの見解を示した。「いじめなど問題行動はない方がいいが、見逃すことはあってはならない」と話した。 不登校の内訳は小学校が1110人(前年度856人)、中学校が1531人(同1336人)、高校が614人(同483人)でいずれも過去最多を更新した。 富川課長は不登校の増加について、自治体が運営する教育支援センターや民間のフリースクールなど学校以外に子どもの居場所ができた背景があるとした。教育機会均等法では不登校は問題行動ではないとされていると説明。無理に登校させるのではなく、子どもが教育を受ける場を確保することが重要だと強調した。 高校中退者は296人(前年度247人)だった。 ■「気になる子」にアンテナを/富大客員教授・辻井農亜氏(附属病院こどものこころと発達診療学講座) コロナ禍を経た現在、いじめの原因は多様化している。特定のケースに限らず、どの子どもにも、どの学校でも起こりうる。いじめの予防をはじめ、被害に遭った子どもの支援、指導に熱心に取り組む教員が多くいる一方で、富山県内ではいじめ増加に歯止めがかからない状況だ。 いじめ対策の質を上げるためには、各領域との協働が欠かせない。教育、行政、医療、法曹などさまざまな分野から幅広く知識を集積し、共にいじめ防止に取り組む必要がある。 いじめや不登校の減少に向けて、子どもたちが安心して生活できる環境をつくることが理想的だ。専門家でなくても、「ちょっと気になる」と感じた子どもらに広くアンテナを張り巡らせ、学校だけでなく家庭や地域社会においても見守りや連携を深めていかなければならない。(談)