なぜ「数字に強い人」は失礼になりがちなのか?
「数字に強い人」は失礼になりやすいから気をつけたほうがいい、という話。 スタンフォード経営大学院教授が学生に教えている、「ただの数字」を「伝わる数字」に変える文章術をbefore→after形式で100以上伝授する新刊『数字の翻訳』が刊行された。本記事では、その中から「伝わりやすい数字」を体感できる例を紹介する。(構成・写真/今野良介) ● 覚えやすいのはどっち? ちょっと、次のエクササイズをやってみてほしい。 下に、2つのリストがある。 まずリストAを数秒間眺めて記憶し、目を閉じて数字を復唱する。 そのあとで、リストBでも同じことをしてみてほしい。 リストA ・2,842,900ドル ・5.73倍大きい ・17分の9 リストB ・300万ドル ・6倍大きい ・2分の1 さて、どちらのリストのほうがよく思い出せただろう? 「リストA」と答えた人は、きっとリストBと勘違いしている。 リストBはあらゆる点で扱いやすい。わかりやすく、思い出しやすく、繰り返しやすい。 そして、どちらのリストも、伝える情報はほぼ同じだ。 新しいオフィスは「6倍」広くなると聞かされ、実際は「5.73倍」広かったとしても、思ったより狭いとは感じない。同じ仕事をしたのに同僚の半分の賃金しかもらえなかったときに、実は17分の9だと言われても、気分はよくならない。 では次に、リストAとBをもう一度見てから、覚えたばかりの数字を使ってちょっと計算をしてみよう。 たとえば、1行目があなたの経営する会社の経常利益、3行目が(ちょっと夢を見て)あなたの取り分だとしよう。 さて、あなたの年収はいくらだろう? リストBを使えば、あなたの懐に150万ドルが転がり込んでくるといううれしい知らせがすぐに手に入る。 リストAでは計算に時間がかかり、あなたの取り分は……ちょっと待って……150万5065ドルとわかる(約150万ドルだ)。計算を終える頃には、話題はもう次に移っている。 相手にやさしい数字を使うべき理由は、何よりもまず相手にやさしいからだ。人は会話から取り残されたくないし、面倒な計算もしたくない。 自分の主張を理解してもらうために、相手にややこしい計算を強いるのは失礼だ。 『数字の翻訳』では、「ただの数字」を「伝わりやすい数字」に言い換える法を、100以上の具体例で伝えていく。 (了) ※本記事は書籍『数字の翻訳』の一部を元に編集しています。
チップ・ヒース